A適応
簡易的な気道確保(用手的気道確保,エアウェイ,口腔内吸引など)では気道確保が困難であり,直ちに高度な気道確保を必要とする状態を気道緊急という.高度な気道確保とは声門上デバイスを用いた気道確保,気管挿管(経口・経鼻),外科的気道確保を指すが,声門上デバイスや気管挿管で気道確保が困難な場合,外科的気道確保の適応となる.外科的気道確保には輪状甲状靭帯切開,輪状甲状靭帯穿刺,気管切開があるが,気道緊急かつ外科的気道確保が必要な場合は,近くに重要な血管や神経がなく,アプローチが容易で,短時間で手技を終えることができる輪状甲状靭帯切開が第1選択になる.
B禁忌
12歳以下の小児の上気道は輪状軟骨レベルが最も狭いという特徴があり,抜去後に声門下狭窄が起こるとされているため禁忌となっている.
C手技
1.必要物品
1)メス(尖刃が望ましい)
2)曲ペアン鉗子
3)気管切開チューブ(6.0mm程度が望ましいが,7.0mmでも可)
4)カフ用シリンジ
2.手技の進め方
手技は術者が右利きであると仮定し,以下の通りに進める.術野の消毒,麻酔については,患者の状況に応じて行う.
1)患者の右側に立ち,左手の母指と中指で甲状軟骨を固定,示指で輪状甲状靭帯を確認する.
2)メスで輪状甲状靭帯直上の皮膚を2~3cm横切開する.
3)輪状甲状靭帯をメスで1.5cmほど切開する.
4)曲ペアン鉗子で切開部分を横方向や縦方向に鈍的に広げる.
5)曲ペアン鉗子を横方向に開いた状態で頭側に倒し,左手に持ち替えて保持する.
6)気管切開チューブを切開部から尾側に向けて留置し,カフを膨らませて固定する.
7)視診や聴診,また酸素飽和度の上昇や呼気終末二酸化炭素が継続的に測定できていることを確認し手技を終了する.
D手技を行ううえでのポイント
1.皮膚切開の方向について
輪状甲状靭帯切開の手技の解説では,横切開を行うという解説が多くみられる.た