Ⅰ.動脈穿刺(1回穿刺手技)
A適応
通常は動脈血ガス分析のために行われる.静脈からの血液検体採取が困難な場合も適応となる.
B穿刺部位
四肢動脈で穿刺可能である.一般的には,穿刺が容易である大腿動脈が第1選択である.
C手技(大腿動脈)
まず大腿動脈の解剖学的位置を理解する必要がある.鼠径靭帯(上前腸骨棘と恥骨結節を結んだ線)2横指ほど足側で動脈拍動を確認し,穿刺点とする.動脈血ガス分析のためであれば市販の穿刺キットを,採血であれば採血量に応じたシリンジと22Gの注射針を用いる.穿刺部位をアルコール綿で消毒し,左手の示指と中指で大腿動脈を左右から挟み込んで固定し,指間部から垂直に穿刺する.採血後は直ちに抜針し穿刺部をしっかり圧迫止血する(5~10分間).圧迫を解除しても皮下の膨隆がなければ止血は完了である.
D合併症
動脈硬化の強い高齢者,抗血小板薬や抗凝固薬を内服中の患者では穿刺部からの止血が困難であり,血腫・仮性動脈瘤を形成することがあり感染のリスクを伴う.また,人工血管が留置されている場合は止血困難であり通常は禁忌である.
Ⅱ.動脈カテーテル留置法(動脈カニュレーション),観血的血圧測定法
A適応
循環不全の状態で連続的な血圧測定が必要な場合や,呼吸不全の状態で頻回な動脈血ガス分析が必要な場合に適応となる.
B穿刺部位
第1選択は橈骨動脈である.留置困難な場合は大腿動脈を選択する.橈骨動脈の穿刺前にはAllen's testを行い尺骨動脈からの血流があることを確認する.
C手技(橈骨動脈)
上肢を軽度外旋し手関節の下に小枕あるいは丸めたタオルを置き,手を軽く伸展させテープで固定する.感染防止のため穿刺部周囲をポビドンヨードで消毒し,疼痛による血管れん縮を予防するため1%リドカインで局所麻酔をする.
左の示指と中指で橈骨動脈の走行を確認し,頭側に向け45度の角度で22G留置針を穿刺す
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