診療支援
治療

頭蓋内圧降下療法 [■その他]
☆☆
treatment of intracranial hypertension
田崎 修
(長崎大学病院教授・高度救命救急センター)

GL改訂第3版 外傷専門診療ガイドラインJETEC(2023)

GL頭部外傷治療・管理のガイドライン 第4版(2019)

治療のポイント

・頭蓋内圧は必ずしも頭部CTなどの画像で推測できるものではないが,脳溝,脳室,脳幹周囲脳槽の狭小化は頭蓋内圧亢進を示唆する所見である.

・画像診断の異常所見,あるいは嘔吐や意識障害など頭蓋内圧亢進を疑う身体所見が認められれば,すみやかに救急医や脳神経外科医にコンサルトする.

・精密に頭蓋内圧降下療法を行うには,頭蓋内圧および脳灌流圧(平均動脈圧-平均頭蓋内圧)をモニターすることが重要である.

◆病態と診断

A病態

・頭蓋内圧亢進を起こす原因には,外傷,頭蓋内出血,水頭症,脳炎などがある.

・脳は硬い頭蓋骨で被われており,頭蓋内の限られた容積に脳実質,血液,髄液,硬膜などが存在する.これら頭蓋内の構成要素に,一定以上の容量増加をきたす事象が加わると頭蓋内圧は亢進する.例えば,血液が血管外に出た場合には,血腫を形成して頭蓋内圧が上昇する.血管より体液が移動して神経細胞内あるいは間質に貯留すれば脳浮腫となって脳実質の容量は増加する.髄液の循環や吸収が悪くなっても水頭症となり頭蓋内圧が上昇しやくすなる.

・圧-容量曲線の関係で,初期の容量増加は脳の可塑性のためほとんど頭蓋内圧上昇に寄与しないが,容量が増えるにつれて一定の容量増加に対する圧上昇の程度が大きくなる.そして,代償機能の限界に近づくと,わずかな容量増加で急激な頭蓋内圧上昇をきたす.

B診断

・頭蓋内圧は通常10~15mmHg以下であり,小児は成人より低い.

・一般的には20mmHg以上が頭蓋内圧亢進と定義されており,持続的に20~25mmHg以上になった場合に治療を開始する.頭蓋内圧の測定は,脳室ドレーンや頭蓋内圧センサーを用いて脳室内圧,脳実質圧,硬膜下圧などを測定して求める.このうち脳室内圧が最も信頼性が高い

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