A適応
四肢ならびに腹部腸管動脈の急性閉塞において,閉塞している血管内にカテーテルを挿入し,膨らませたバルーンを引き戻すことで血栓などを除去し血流再開をはかる.救肢可能ないわゆるgolden hourは6時間以内であり,24時間を超えると約20%が切断に至る.術前から高度の代謝性アシドーシス,高K血症,CPK高値,ミオグロビン尿(いわゆるポートワイン尿)を認めた場合は,虚血に伴う組織障害が全身に波及した代謝性筋腎症候群(MNMS:myonephropathic metabolic syndrome)と判断し,血行再建は断念し肢切断を考慮する.血管内治療(経皮的血行再建)を行うか外科的治療を行うかは,その施設の診療科の環境,患者の状態に左右される.
B手技
1)局所麻酔下で施行可能であるが,いつでも全身麻酔に切り替えられる体制で行うことが望ましい.なお,術前にヘパリンを投与するため,腰椎麻酔や硬膜外麻酔は用いない.
2)まず,選択したカテーテルに生理食塩液を注入し,破損の有無,バルーンの大きさを確認する.バルーン内に4倍希釈程度の造影剤を注入すると透視によりバルーンの位置や形状を確かめることができる(上腕,前腕動脈は2~4F,腸骨動脈5F,大腿動脈3~5F,膝窩動脈以下は2~3F,腸管動脈3F).
3)血管走行に沿って十分な皮膚切開をおき,血管を露出する.
4)対象血管の中枢と末梢でtapingを行う.この際,背側から出る分枝を傷つけないように注意する.
5)全身にヘパリン100単位/kgを静注後,これら動脈を遮断鉗子にて遮断する.
6)対象動脈に約1/3周の横切開をおき,動脈サイズに適したフォガティー・カテーテルを中枢側へ挿入する.
7)あらかじめ,挿入する距離を確認しておいてから挿入する.血管内腔を十分に確認し,内膜を損傷しないように慎重に挿入する.少しでも抵抗を感じたら挿入を中止し,再
関連リンク
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