診療支援
治療

セルメチニブ硫酸塩


特 徴

 神経線維腫症1型(NF1)治療薬.

 NF1は,腫瘍抑制蛋白質ニューロフィブロミンをコードするNF1腫瘍抑制遺伝子の病的バリアントが原因で発症する常染色体顕性遺伝疾患である.特有な皮膚色素沈着(カフェオレ斑)や,患者の30~50%にみられる神経鞘の腫瘍(叢状神経線維腫,PN)を主徴とし,皮膚,神経系,眼,骨などに多種病変が年齢の変化とともに出現し,全身に多彩な徴候を呈する.NF1はGTPアーゼ活性化蛋白質(RAS)とその下流に続くプロトオンコジーンセリン/トレオニンプロテインキナーゼ(RAF)/MEK/ERK経路が活性化することにより,神経系の細胞が増殖し続けて発症する.本症は指定難病であり日本の患者数は約4万人と推定され,NF1患者は健康人に比べて平均余命が最長で15年短くなる可能性があるとの報告もある.NF1患者ではRASを不活型に変換するニューロフィブロミンが正常に機能しないために,RAF/MEK/ERK経路の活性化が持続する.セルメチニブは,MEK1/2を阻害することでMEKの基質であるERKのリン酸化を阻害し,RASにより調節されるRAF/MEK/ERK経路のシグナル伝達を抑制することで,NF1における神経線維腫を縮小させる.2022年9月に承認された.

商品名

 コセルゴカプセル

主症状

 重大な副作用として,心機能障害〔駆出率減少(14.5%),左室機能不全(頻度不明)など〕,眼障害〔網膜色素上皮剥離(頻度不明),中心性漿液性網膜症(頻度不明),網膜静脈閉塞(頻度不明)など〕,消化器障害〔嘔吐(66.1%),下痢(59.7%),悪心(53.2%)など〕,肝機能障害,横紋筋融解症,貧血・血球減少症,間質性肺疾患などが報告されている.その他の副作用として,口内炎,発疹,皮膚乾燥,疲労・無力症などの報告がある.

治 療

 重大な副作用などが出現した場合には,投与の減量ない

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