頻度 あまりみない
治療のポイント
・毒性が強い.
・呼吸困難や低酸素血症が出現するまで酸素投与は控える.
・Proudfoot生存曲線やHartノモグラムを参考に治療方針を検討する.
・パラコートは少量摂取でも致死的肺損傷や死亡につながる.
・パラコートについて,1986年には毒性低減のため5%製剤に変更され,ジクワットとの混合製剤となり,誤飲防止のため青緑色色素,苦味剤,臭気性物質,催吐剤が配合された.
・現在国内でのパラコート原体の生産は中止しているが,パラコート製剤の生産や販売は行われている.
◆病態と診断
A病態
・パラコートは,生体内でパラコートラジカルになりスーパーオキシド基を生成し,レドックス・サイクルとよばれる還元酸化を繰り返す.その結果NADPHが枯渇し細胞死に至る.
・パラコートは肺胞細胞壊死と線維化を生じる.ジクワットは腎尿細管壊死を生じる.
・経口摂取では主に小腸で1~5%が吸収され,残りは未変化体のまま尿中に排泄される.
・服用後4時間以内に血中濃度は最高となり,主に肺,腎臓,肝臓,筋肉に分布する.
B症状
・初期症状:口腔や上部消化管粘膜のびらん,潰瘍,悪心,嘔吐,流涎,疼痛,食道穿孔による縦隔炎,胸痛.
・2~3日後:腎・肝不全が進行,乏尿,無尿,黄疸.
・3~10日後:進行性肺線維症,心嚢・縦隔気腫,気胸.
・3か月後:急性糸球体腎炎.
・最重症例ではショックや肺水腫・呼吸不全のため早期に死に至る.
C診断
・現場の状況と口腔内の青緑びらん,青緑色の吐物があれば疑う.
・ベッドサイドでは簡易分析法が有用.尿1mLに0.1%ハイドロサルファイト含有1M水酸化ナトリウム溶液1mLを加え撹拌.パラコートは青色に,ジクワットは緑色となる.2μg/mLが検出下限.
・血中濃度定量には高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などを使用.
・動脈血液ガス分析で低酸素血症の有無を確認.
・血液検査では,白血球