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治療のポイント
・ベンゾジアゼピン系薬物中毒は全身管理が適切であれば予後良好である.気道閉塞,呼吸抑制に注意してモニター管理を行う.
・バルビツール酸中毒は呼吸抑制・呼吸停止をきたしうるため,モニター管理を行う.必要に応じて気管挿管,人工呼吸管理を行う.
◆病態と診断
A病態
・ベンゾジアゼピン系薬物,バルビツール酸は脳内のGABAA 受容体に結合することで,抑制伝達物質であるGABAとその受容体の親和性が高まる.
・ベンゾジアゼピン系薬物中毒では中枢神経抑制作用が生じ,傾眠や意識障害,呼吸抑制を生じる.循環器系症状はまれである.
・代表的な経口ベンゾジアゼピン系薬物には,ジアゼパム,アルプラゾラム,ロフラゼプ酸エチル,トリアゾラム,フルニトラゼパム,エチゾラム,ブロチゾラムなどがある.
・バルビツール酸中毒も中枢神経抑制作用が生じ,傾眠や意識障害,呼吸抑制を生じる.特に短時間~中間型バルビツール酸中毒では呼吸停止により致死的となることがあるため,注意が必要である.その他の症状として,低血圧,低体温,気道分泌物喀出困難による無気肺がある.
・代表的な経口バルビツール酸には,短時間型であるペントバルビタールカルシウム,中間型であるアモバルビタール,長時間型であるフェノバルビタールがある.
B診断
・意識障害で患者から病歴聴取が困難であっても,周囲の人や救急隊からの情報収集で診断は容易であることが多い.
・鑑別診断には薬物中毒検出用キットであるSIGNIFY ERが役立ち,BZO(ベンゾジアゼピン類),BAR(バルビツール酸類)が陽性となる.
◆治療方針
Aベンゾジアゼピン系薬物中毒
全身管理が適切であれば予後良好である.呼吸抑制,気道閉塞,嘔吐による誤嚥などに注意し,意識レベル改善まではモニター管理をしながら経過観察する.ベンゾジアゼピン系薬物単独の大量服用では,持続時間は12~36時間程