Ⅰ.アセトアミノフェン中毒
◆病態と診断
A病態
・処方薬以外に市販薬にも配合されている.単回の大量服薬だけでなく,治療用量を超える量の繰り返し服用でも中毒となりうる.
・アセトアミノフェンを大量に摂取するとグルクロン酸抱合および硫酸抱合が飽和し,チトクロームP450酵素系による代謝に移行して毒性物質であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)の産生が増加する.解毒作用のあるグルタチオンも枯渇すると,処理しきれなくなったNAPQIが細胞死をもたらし肝障害,肝不全に至る(内服から24~72時間以降).
B診断
・服用歴があり,悪心・嘔吐などの症状がある場合は本疾患を疑う.
・血中濃度を測定し,高値であれば診断は確定する.
◆治療方針
致死量を内服し,消化管内に残存していると判断した場合は胃洗浄,活性炭投与を行う(→,「急性中毒治療の原則」の項参照).
A解毒薬
摂取後4時間以降の血中濃度を測定しRumack-Matthewのノモグラムで肝障害の可能性を評価する.さらに,Smilksteinらの治療線よりも上にある場合は,N-アセチルシステインを投与する.血中濃度の測定が不可能なら,150mg/kg以上内服している場合は投与を検討する.早期投与が望ましいが,遅延投与でも効果がある.慢性中毒では,ALT≧50IU/L,血中濃度≧20μg/mLのいずれかが当てはまる場合は投与する.
Px処方例
アセチルシステイン薬内用液 初回:1回140mg/kg(成分量として),2回目以降:1回70mg/kg(成分量として) 4時間ごと 17回,合計18回
B血液透析法
血液浄化法での除去は可能であるが,半減期が短く通常適応にならない.血中濃度が異常高値で,意識障害やアシドーシスを伴う重症例では血液透析法を検討する.
■専門医へのコンサルト
・肝不全に移行した場合は血漿交換や血液浄化法などの集中治療,さらに重
関連リンク
- 今日の治療指針2024年版/急性中毒治療の原則
- 治療薬マニュアル2024/アセチルシステイン《アセチルシステイン》
- 治療薬マニュアル2024/炭酸水素ナトリウム《炭酸水素ナトリウム 炭酸水素Na メイロン》
- 今日の治療指針2023年版/解熱鎮痛薬中毒(アセトアミノフェン,アスピリン)
- 今日の治療指針2024年版/グリホサート・グルホシネート中毒
- 今日の治療指針2024年版/シアン中毒
- 今日の治療指針2024年版/高Mg血症,低Mg血症
- 今日の治療指針2024年版/Ⅳ.肝・腎障害時における各種治療薬の投与法
- 今日の救急治療指針 第2版/解熱鎮痛薬・循環呼吸系薬・外用薬中毒
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[11]アセトアミノフェン
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[12]アスピリン
- 今日の診断指針 第8版/解熱鎮痛薬中毒