頻度 あまりみない
治療のポイント
・経口摂取により消化管の粘膜障害を起こす.
・血中に移行すると多彩な全身症状を引き起こす.
◆病態と診断
Aクレゾール
・クレゾール(メチルフェノール)は,3種類の構造異性体をもつ不快な石炭酸臭を伴うアルカリ性の有機化合物である.水に難溶性であるため石鹸水に可溶化して,42~52vol%クレゾール石鹸水として医用器具や手指,汚物処理の消毒液に使用される.
・細菌と結核菌に有効であるが,芽胞と一部のウイルスには無効である.細胞毒性が強いため希釈して使用されるが,最近では使用頻度が減少している.経口での致死量は1.5g/kgである.
・経気道,経皮,経口で摂取され,経口では消化管粘膜障害,血中に移行すると溶血,急性腎不全,けいれんなどの中枢神経症状,呼吸器症状,肺水腫などの循環器症状,メトヘモグロビン血症など多彩な全身症状を引き起こす.
B逆性石鹸
・逆性石鹸は普通石鹸(陰イオン界面活性剤)に対して陽電荷であり,陰電荷の細菌に吸着し蛋白変性させる.経口での致死量は50~500mg/kgである.
・多量服薬だけでなく,自殺企図,犯罪などによる経静脈注射などで血中に移行すると早期に呼吸困難から急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome),ショックなどの循環器症状,ヘモグロビン尿から急性腎不全,肝機能障害など多臓器不全を引き起こす.
◆治療方針
A全身管理
1.気道確保
クレゾールの経気道や経口摂取にて,喉頭浮腫など気道緊急がみられる場合は,すみやかな気道確保が必要である.
2.呼吸管理
呼吸困難,低酸素血症がみられれば,早期に酸素投与,気管挿管,人工呼吸器管理を行う.
B吸収阻害
致死量に至る経口摂取では,排泄促進として胃洗浄,活性炭が有効な場合がある.ただし気道・呼吸状態の安定が必要である.
C排泄促進
血液浄化法の有効
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