頻度 あまりみない
治療のポイント
・ガソリンや灯油は,誤飲・誤嚥・吸入・接触により化学性肺炎,中枢神経障害,接触皮膚炎を起こす.
・ガソリンや灯油を誤飲すると,その直接刺激や催吐作用によって口腔咽頭の熱感,嘔気嘔吐など消化器症状が出現し,その後誤嚥による咳嗽,呻吟,チアノーゼなど呼吸器症状が出現し,急性呼吸促迫症候群(ARDS)などの呼吸不全を生じる.
・ガソリンや灯油が皮膚に一定時間曝露すると化学損傷を起こし,灯油皮膚炎とよばれる接触皮膚炎を起こす.
・拮抗薬はなく,全身管理や対症療法が中心である.
・粘度が低く,揮発性があり,容易に気道へ拡散するため,催吐や胃洗浄は推奨されない.
◆病態と診断
A病態
・石油製品は主に脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の混合物である.
・脂肪族炭化水素より芳香族炭化水素のほうが,揮発性が高く毒性は強い.
・灯油よりもガソリンのほうが芳香族炭化水素の割合が高く,プレミアムガソリンはレギュラーガソリンよりもさらにその割合は高い.
・致死量はガソリンで10~50mL,灯油で90~120g(誤嚥すれば数mL)とされている.
・低い粘性と高い揮発性をもち,催吐作用もあるため,容易に気道に拡散し化学性肺炎を生じやすい.死亡例のほとんどはARDSといわれている.
・経口摂取すると,粘膜刺激作用により,嘔気・嘔吐,下痢などの消化器症状を生じる.
・消化管から吸収されると,中枢神経系に作用して傾眠~昏睡,けいれんを起こし,循環器系に作用して不整脈を起こす.またカテコールアミンは不整脈を起こすことがあるので慎重に投与する.
・皮膚が一定時間曝露すると,角化細胞を融解し接触皮膚炎を起こす.
B診断
・小児の誤飲事故や自殺企図による中毒例が多く,病歴や特有の臭いから診断する.
◆治療方針
A全身管理
1)気道を確保して,必要なら酸素投与を行い,補助換気や気管挿管を行う.
2)パルスオキシメーター,心電図モ