頻度 あまりみない
ニュートピックス
・2022年に,末梢性T細胞リンパ腫の治療薬として有機ヒ素であるダリナパルシン(ダルビアス)の使用が認可された.後述のごとく有機ヒ素は無機ヒ素に比べ弱毒性にて急性中毒のリスクは少ないが,ほかのヒ素化合物治療薬〔三酸化二ヒ素(トリセノックス)〕と同様QT延長からの致死性不整脈などには十分注意する必要がある.
治療のポイント
・循環不全などの臓器不全に対して集中治療室での厳密な全身管理を行いつつ,解毒薬のジメルカプロールを投与する.
・ほとんどのヒ素/ヒ素化合物は無味無臭であるが,摂取後の胃酸との反応物であるヒ化水素:アルシンAsH3 により呼気でニンニク臭を放つことがある.アルシンは猛毒であり胃洗浄の際に発生したアルシンによる医療従事者への2次被害に十分注意する.
◆病態と診断
Aヒ素/ヒ素化合物について
・ほとんどのヒ素/ヒ素化合物は有毒である.ヒ素化合物には無機化合物と有機化合物があり前者の毒性が強い.無機化合物では三酸化二ヒ素As2O3 が有名で,水に溶けると亜ヒ酸As(OH)3 となりいずれも強毒性である.
・かつてはヒ素/ヒ素化合物は農薬や歯科治療剤,木材防腐剤,シロアリ駆除用として比較的容易に入手可能であったが,現在はその強毒性から販売中止となったり毒物及び劇物取締法の対象物となることで入手困難となった.しかし現在でも研究用やインターネット輸入サイトなどで入手可能であり,臨床診療においてヒ素中毒の知識をもっておくことは必要である.
B吸収・分布・排泄経路
・経口摂取後に容易に小腸から吸収される.
・血中ではヘモグロビンのグロビンと結合し24時間以内に各臓器に再分布する.血液内に残留したヒ素は血漿蛋白と結合する.4週間以内にケラチンのもつスルフヒドリル(SH)基と結合し毛髪,爪,皮膚などに取り込まれる.
・肝臓でメチル化され解毒されたのち半数は尿に,ほか
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/ジメルカプロール《バル》
- 今日の治療指針2023年版/急性中毒治療の原則
- 今日の治療指針2023年版/消毒薬中毒(クレゾール,逆性石鹸)
- 今日の治療指針2023年版/ヒ素中毒
- 今日の治療指針2024年版/ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)水和物
- 今日の治療指針2024年版/グリホサート・グルホシネート中毒
- 今日の治療指針2024年版/消毒薬中毒(クレゾール,逆性石鹸)
- 今日の治療指針2024年版/有毒アルコール(メタノール・エチレングリコール)中毒
- 今日の救急治療指針 第2版/中毒患者の診かた
- 今日の救急治療指針 第2版/家庭用品による中毒(化粧品,石鹸,洗浄剤,義歯洗浄剤,文具品,保冷剤,他)
- 新臨床内科学 第10版/6 ヒ素,水銀