診療支援
治療

急性エタノール中毒
acute ethanol poisoning
田口 大
(北海道勤労者医療協会勤医協中央病院・救急科科長)

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治療のポイント

・急性エタノール中毒による意識障害とその他の意識障害を鑑別する.

・急性エタノール中毒患者による問題行動に対して,医療者側の安全対策をはかることも肝要である.

◆病態と診断

A病態

・エタノールの代謝速度や中毒症状の発現は個人差が大きい

・以下のように,血中エタノール濃度(BEC:blood ethanol concentration)実測値もしくは浸透圧ギャップによるBEC推定値は,臨床所見を推定しうるが,意識レベルとの関連性は乏しい.

・BEC100mg/dLで多幸感,協調運動障害,注意力低下が出現する.100~200mg/dLで発語不明瞭となり気分不安定となる.200~300mg/dLで歩行失調,意識障害,嘔吐が出現する.300mg/dL以上で昏睡や意識消失をきたし,呼吸抑制や死亡することもある.

・末梢血管拡張による血圧低下や糖新生抑制による低血糖も生じうる.

B診断

・飲酒歴・呼気アルコール臭・眼球結膜充血により疑う.

・浸透圧ギャップの測定によってBEC(mg/dL)が推定でき,意識障害の鑑別や入院適応の判断に活用できる.

・浸透圧ギャップ=血清浸透圧(mOsm/L)-{2×Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)/18+BUN(mg/dL)/2.8}で定義され,BEC推定値=浸透圧ギャップ×4.6で算出される.

◆治療方針

 解毒・拮抗薬はなく,経口摂取の場合,すみやかに胃内で吸収されるため活性炭投与は効果が乏しい.

 飲酒に伴う急性エタノール中毒では血液透析は不要だが,高濃度の無水エタノール服用事案で血液透析有効例の報告がある.

 意識障害に伴う舌根沈下や呼吸抑制および吐物による窒息を認めた場合,気管挿管し人工呼吸管理を行う.

 血圧低下に対して補液を行うが,補液による覚醒改善効果はなく,院内滞在時間短縮効果も認められないためルーチンでの点滴処置は望ましくない

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