診療支援
治療

タバコ中毒(誤飲・誤食)
tobacco ingestion
黒澤慶子
(大分大学・救急医学)

頻度 ときどきみる

治療のポイント

・主にニコチンによる急性中毒症状が出現する.

・胃洗浄はリスクのほうが大きいため実施しない.

・成人では自殺企図の可能性を念頭に治療にあたる.

・タバコの浸漬液の誤飲は,小児だけではなく認知機能低下の高齢者も注意が必要である.

◆病態と診断

A病態

・ニコチンはアルカロイドの一種であり毒性は強い.

・ニコチンの致死量は小児で10~20mg(紙巻きタバコ1~2本),成人で40~60mgといわれているが,明確なエビデンスが存在しない.またニコチンによる強い催吐作用が表出するため,吸収前に嘔吐して排出し,吸収されても大部分が肝臓でコチニンに変換されるので軽症であるケースがほとんどである.

・従来紙巻きタバコでの事故が最多であったが,近年では加熱式タバコによる事故が上回る.

・5歳以下の子供の誤飲・誤食が多く,住居内での曝露が大多数である.

・ニコチンはニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に作用し,交感神経・副交感神経を刺激する.

・タバコ葉は水に漬けると1時間程度で70~100%のニコチン溶出を認める.タバコ浸漬液は誤食よりも症状が強く出るケースがある.

・加熱式タバコでは箱に入ったカプセルなどを小児が取り出し,誤食することがある.

・電子タバコが国内で販売開始されているが,ニコチン含有リキッドは医薬品である.個人輸入品のニコチン含有リキッドは紙タバコよりニコチン含有量が多い.米国では死亡例も報告されている.

B診断

・タバコの誤飲・誤食を疑う状況.口腔内のタバコ葉などから診断する.

・気分不良,嘔気嘔吐,めまい,動悸,不機嫌,腹痛,下痢などを認め,重症例では縮瞳,意識障害,低血圧,徐脈,流涎などが起こる.

◆治療方針

 タバコを誤飲・誤食した場合,ニコチン吸収を促進するおそれがあるので,飲み物を飲ませてはいけない.また,胃洗浄は行わない.小児では軽症が多く,2~3時間の経過

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