頻度 ときどきみる
治療のポイント
・自殺企図だけではなく,火災や換気不良などにより意図せず曝露することがある.
・患者と同じ環境にいる人は,無症状であってもCO中毒である可能性を念頭におく.
・急性期回復後は,遅発性脳症の早期発見のため定期的な診察が望ましい.
◆病態と診断
A病態
・一酸化炭素(CO)とヘモグロビン(Hb)は酸素とHbより強い親和性で結合し,カルボキシヘモグロビン(CO-Hb)を形成することで,Hbの酸素運搬能を低下させ,組織の低酸素症をきたす.
・COはミオグロビン(Mb)にも強い親和性で結合し,心筋障害の発生に関与するとされる.
・COはミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼにも結合し,酸化的リン酸化に障害をきたす.
B診断
・火災,物質の不完全燃焼,密閉空間における炭火使用などのCO曝露歴,血中CO-Hb濃度,高乳酸血症などがある場合はCO中毒を疑う.
・血中CO-Hb濃度と症状の重症度は比例しないことが多い.
・喫煙者は平時からCO-Hbが5~10%程度であるため総合的な判断が望ましい.また,CO-Hb濃度が低値でも代謝性(乳酸)アシドーシスがあれば急性CO中毒を疑う.
・軽症では頭痛やめまい・嘔気など,重症では意識障害やけいれん・呼吸抑制などが出現することがある.
・頭部CTやMRIの典型所見は両側淡蒼球や白質の異常信号だが,神経学的症状と画像所見は一致しないこともある.
◆治療方針
A全身管理
呼吸循環動態の安定をはかる.
B酸素療法
動脈血酸素分圧を上げ,一酸化炭素の排泄を促す.正常気圧下で酸素を投与しない場合のCO半減期は4~5時間である.
1.正常気圧酸素療法(NBO:normobaric oxygenation)
直ちに高濃度酸素投与を開始する.気管挿管を行った場合は100%酸素とする.CO半減期は平均1.5時間となる.ただし,身体症状が改善するまで6時間以上は継続する