診療支援
治療

天然ガス・プロパンガス中毒
LNG(liquefied natural gas)and LPG(liquefied petroleum gas)poisoning
磯川修太郎
(聖路加国際病院・救急科・救命救急センター(東京))

頻度 あまりみない

 燃料ガスは,主に炭素数1~4の脂肪族炭化水素が使用されており,用途によって成分や組成が異なる.天然ガスとはメタンを主成分とする可燃性の気体で,空気より軽く,液化天然ガス(LNG:liquefied natural gas)として海外より輸入され,事業者により気化・熱量調整・付臭が行われたのちに,都市ガスとしてガス管を通じて供給されている.一方,液化石油ガス,通称LPガス(LPG:liquefied petroleum gas)とは,プロパンやブタンを圧縮・液化したもので,家庭で用いられるLPガスの主成分はプロパンであるため,プロパンガスともよばれる.LPガスは室温で容易に気化し,空気よりも比重が重く,ガス漏れの際は床面に滞留し,特有の付臭によって認知される.カセットコンロやライターガスはブタンが主成分で,LPガスの一種である.

◆病態と診断

A病態

・燃料ガスによる毒性は3つに分けられる.第1は,空気がガスに置換されて生じる酸素欠乏性低酸素症,第2は,ガスの不完全燃焼に伴う一酸化炭素中毒,第3はガス自体による中毒で,ガス自体による毒性は炭素数が多いと強くなる.

・天然ガス・プロパンガスともに肺からすみやかに吸収され,非極性・疎水性・脂溶性のため血液脳関門を容易に通過するが,ほとんどは未変化体として呼気中に排泄される.両者ともガス自体による毒性は低く,主な死因は閉鎖空間でガスが充満することで生じる酸素欠乏性低酸素症である.

・軽症~中等症では悪心・嘔吐や頭痛,めまい,多幸感,高揚感,混乱,無気力,失見当識,運動失調などを生じ,重症では昏睡やけいれん,低酸素血症,呼吸停止,心室細動などの不整脈をきたす.

・プロパンやブタンは,カテコールアミンに対する心筋感受性が増大し,心室細動などの不整脈を生じることがある.

・両者とも可燃性・引火性があり,ガス漏洩や漏洩火災・爆発に注意

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