頻度 あまりみない
治療のポイント
・特異的な治療法はなく,対症療法が中心となる.
◆病態と診断
A病態
・揮発性有機化合物とは常温で大気中に揮発する有機化合物の総称で,代表的な物質としてトルエン,キシレン,パラジクロロベンゼン,スチレンなどがある.
・シンナーとは塗料を希釈するための液体であり,揮発性有機化合物が主成分となるものが多い.
・多幸感を求めて自ら吸入することがあり,事故も併せてトルエンやキシレンを含むシンナーによる急性中毒が多い.
・揮発した有機化合物を吸入することで肺から体内に吸収され,主に中枢神経症状が出現する.
・消化管からはほとんど吸収されない.
・低濃度で吸入すると頭痛やめまい,悪心など,中濃度になると多幸感や気分高揚が出現し,酩酊状態となる.
・高濃度で吸入するとせん妄や昏睡,けいれんといった重度の中枢神経症状のほか,肺への直接的な障害による肺水腫や急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome),多様な不整脈やショックなど循環器症状も出現する.
・慢性曝露では脳萎縮や尿細管障害を認めることがある.
B診断
・曝露歴や揮発性有機化合物特有の臭いで推察して診断する.
・トルエンであれば馬尿酸,キシレンであればメチル馬尿酸がそれぞれ尿中に検出されれば特異的なマーカーとなる.
・長期の曝露歴のほか,頭部MRIで脳萎縮や,尿細管性アシドーシスによる低K血症などがあれば慢性中毒を疑う.
◆治療方針
曝露源からの隔離以外は対症療法となり,呼吸不全があれば人工呼吸器管理,循環不全に対しては輸液やカテコールアミン投与,抗不整脈薬を投与するなど,バイタルサインの安定をはかる以外に特異的な治療法はない.
シンナーにはメタノールを含むものもあり,メタノール中毒の治療も考慮する〔→,「有毒アルコール(メタノール・エチレングリコール)中毒」の項参照〕.
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