頻度 あまりみない
治療のポイント
・キノコの同定は重要である.
・毒物に対する拮抗薬はなく,治療は対症療法が中心で,治療開始は早ければ早いほどよい.
・初期治療は中毒治療に準じる.
・最も多い消化器症状に対して十分な補液による脱水の予防を行う.
・重症例では集中治療が必要である.
・食用キノコによる中毒やアレルギーも報告され鑑別が難しい場合がある.
・食中毒として保健所への届出が必要である.
◆病態と診断
A病態
・主に3つの病態に分類される.
1.消化器障害型(54.6%)
・ツキヨタケ,クサウラベニタケが代表的キノコで,ツキヨタケはイルジンSが主毒成分で加熱でも失活せず,摂取量と重症度は一致しない.
・摂取後30分から3時間で激しい嘔吐,下痢,腹痛が出現し,脱水症状や電解質異常などが起こる.特徴的な症状としては,色覚異常が報告されている.
・多くの場合,消化器症状は24時間程度で回復するが,一部,症状が遷延し肝機能障害をきたす重症例がある.イルジンSが十二指腸を中心に消化管浮腫を起こすためとされている.
2.神経系障害型(11.6%)
・多くのキノコが含まれ多彩な症状を呈する.代表的なベニテングタケはめまい,運動失調から昏迷,せん妄が出現し,意識消失する.マジックマッシュルームは短時間でめまい,脱力感,不穏,口唇のしびれ,幻覚,流涙,発汗,顔面紅潮が現れる.コリン様症状が主体で発汗,分泌亢進,徐脈,縮瞳,視力障害,血圧低下を示すもの,ほかにもけいれんや四肢末端のしびれ,疼痛・腫脹(末端紅痛症)を起こすものもある.
3.原形質毒性型(2.4%)
・ドクツルタケやコレラタケなど致死的な経過をとる場合があり,主成分はアマニタトキシンとよばれ,重篤な肝・腎障害を引き起こす.毒キノコ中毒死のほとんどがアマニタトキシン中毒とされている.
・これ以外にも横紋筋融解症,凝固障害や心機能障害を引き起こすものも報告されている.
関連リンク
- 今日の治療指針2024年版/急性中毒治療の原則
- 今日の治療指針2024年版/オキサプロジン
- 今日の治療指針2024年版/ヒ素中毒
- 今日の治療指針2024年版/揮発性有機化合物による中毒(シンナー吸入を含む)
- 臨床検査データブック 2023-2024/食中毒
- 今日の救急治療指針 第2版/中毒患者の診かた
- 今日の救急治療指針 第2版/トキシドローム
- 今日の救急治療指針 第2版/工業用品による中毒(重金属,石油,有機溶剤,砒素,シアン,他)
- 今日の救急治療指針 第2版/ガス中毒(一酸化炭素,塩素,硫化水素,亜硫酸ガス,天然ガスなど)
- 新臨床内科学 第10版/5 生物毒素中毒による神経障害
- 今日の診断指針 第8版/重金属中毒