診療支援
治療

ヘビ咬傷(ニホンマムシ,ヤマカガシ,ハブ)
snake bites(mamushi,yamakagashi and habu)
喜屋武玲子
(埼玉医科大学講師・臨床中毒科)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・個体の色彩変異が多く,同定は困難.症状や検査データなどから種を推定する.

・緊縛,切開,吸引は推奨しない.

◆病態と診断

Aニホンマムシ咬傷

・日本全土の広範囲に棲息し,夜行性.

・咬傷直後に腫脹・疼痛が起こり,その後皮下出血・水疱形成・リンパ節腫脹が出現.腫脹に応じ重症度を評価する().咬傷後数時間でさまざまな全身症状が起こり得る.

Bハブ咬傷

・沖縄・奄美群島に生息し,夜行性.

・咬傷直後から疼痛を認め,その後局所の腫脹が出現.コンパートメント症候群を呈することも多い.重症例は局所症状に加え,消化器症状,意識障害,循環不全などの全身症状も呈する.

Cヤマカガシ咬傷

・北海道・南西諸島・沖縄を除く山林や水田域に棲息し,昼行性.

・受傷部位の持続出血を認めることが多く,疼痛や腫脹はほとんどない.血液凝固作用により,重篤な場合は,全身に及ぶ皮下出血や臓器出血が起こり,脳出血から死に至ることもある.

◆治療方針

Aプレホスピタル

 創部洗浄後,安静保持をしながら,すみやかに医療機関を受診する.中枢側緊縛は,組織浮腫・損傷を増悪させる可能性があるため行わない.

 創切開や吸引は,汚染の拡大や創傷治癒遅延の原因となるため行わない.

B搬送後

1.入院適応

 腫脹拡大,血液検査・バイタルなどの異常を認めたら入院とする.受診時に血液検査データ異常や創部腫脹がなくても,のちに悪化する可能性があるため,1~2時間後の再検査や頻回な創部確認が必要.

2.抗毒素血清の適応

a.マムシ抗毒素

 Grade Ⅲ以上で適応.

Px処方例

 乾燥まむしウマ抗毒素注 1回6,000単位 点滴静注

b.ハブ抗毒素

 適応は定まっておらず,各施設の方針に従う.

Px処方例

 乾燥はぶウマ抗毒素注 1回6,000単位 点滴静注

c.ヤマカガシ抗毒素

 フィブリノゲン<100mg/dLで適応とされるが,未承認薬で,保存数・地域に

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?