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治療のポイント
・本邦でのハチ刺傷による死亡者数は年間10~20人前後で推移している.
・セアカゴケグモは外来種だが,全国各地に生息している.
・早期医療介入および高次医療機関での全身管理を要することがある.
◆病態と診断
A病態
1.ハチ類
・スズメバチ,アシナガバチやミツバチが人に被害を与える.被害は,林業や養蜂業などの従事者,夏~秋頃,男性に多い.重症例は高齢層に多く,小児は少ない.
・ハチ毒成分は,ハチの種類により異なり,アミン類(ヒスタミンなど),ペプチド類(キニンなど),酵素類(ホスホリパーゼなど)に分類される.
・症状は,アレルギー症状とハチ毒の直接的症状である.特に,アナフィラキシーは死亡原因の大部分を占め,1回目の刺傷でも生じ,短期間での再刺傷では生じやすい.
・ハチ毒とヒアリ毒やムカデ毒は免疫学的な交差反応性が指摘され,注意を要する.
2.セアカゴケグモ
・生活圏内の人工物に生息し,人への攻撃性は低い.
・雌は毒牙を有し,神経毒(α-ラトロトキシン)を注入しうる.
・症状は,個人差が大きく,時間とともに増強し,範囲が拡大する疼痛や咬傷部位と異なる部位の疼痛を生じる.神経毒により嘔吐や下痢,頭痛など多彩な全身症状を呈す.
B診断
・正確な診断は難しく,受傷状況や臨床症状を勘案し判断する.
・皮膚および粘膜症状,気道,呼吸,循環,意識などの全身状態を評価する.
・刺傷数や部位を確認する.
◆治療方針
Aアナフィラキシー
直ちにアドレナリンを筋肉注射する.
Px処方例
アドレナリン薬注 1回0.01mg/kg 大腿部中央前外側に筋注(最大投与量成人0.5mg,小児0.3mg).症状に応じて5~15分ごとに繰り返す
B局所治療
局所の腫脹や疼痛,瘙痒には,冷却やNSAIDs内服,ステロイド外用薬を使用する.
Px処方例 症状に応じて下記を併用する.
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エス
関連リンク
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