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治療

ポリオ(急性灰白髄炎) [■2類感染症]
poliomyelitis
齋藤昭彦
(新潟大学大学院教授・小児科学)

頻度 (本邦ではきわめてまれ)

ニュートピックス

・新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより,ポリオのワクチン接種率が下がり,ポリオの再流行が懸念されている.

・2022年には,生ワクチン由来のポリオウイルス(2型)が先進国でも検出された.

治療のポイント

・ポリオに直接効果のある治療薬はなく,対症療法のみである.

・ポリオの予防にはワクチン接種が重要である.

◆病態と診断

A病態

・ポリオ(急性灰白髄炎)は,ピコルナウイルス科エンテロウイルス属のポリオウイルスが中枢神経系に侵入し,脳内の運動神経ニューロンや脊髄の前角細胞を破壊し,弛緩性麻痺を起こす急性感染症である.

・ポリオウイルスには血清学的に1型,2型,3型の3種類あり,ヒトのみが自然宿主である.

・ポリオウイルスは経口感染し,咽頭粘膜や腸粘膜で増殖,リンパ系から血中に入り,最終的に中枢神経系に感染し麻痺を起こす.

・感染すると90~95%は無症状,4~8%が風邪症状,0.5~1%が無菌性髄膜炎,四肢の急性弛緩性麻痺(AFP:acute flaccid paralysis)は0.1%以下である.

・AFPを発症した場合,小児の致死率は2~5%である.

・麻痺以外の症状としては,発語障害,嚥下障害,呼吸筋の麻痺による呼吸不全などがある.

・2022年現在,野生型の感染は,パキスタン,アフガニスタンの2か国で報告されているが,野生型の感染の報告がない地域でも,生ワクチン由来の2型ポリオウイルスの検出やワクチン由来のAFP患者が報告されている.

・ポリオ罹患者で数十年後,筋萎縮,筋力低下,歩行障害などの新たな神経症状が出現する病態をポストポリオ症候群(PPS:post-polio syndrome)とよぶ.

B診断

・AFPの潜伏期間は通常7~21日(範囲:3~35日).

・AFP症例を診断した際には,保健所に届ける.

・糞便からのウイルス分離が最も診断価値

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