頻度 あまりみない(わが国ではまれ,頻度の高い地域は,中南米,サハラ以南のアフリカ,中央および南西アジア,南欧~東欧の農村地帯である)
治療のポイント
・病型によって重篤度と治療薬剤が異なる.
・感染症法の4類感染症だが,バイオテロが疑われる場合は直ちに届け出が必要.
◆病態と診断
A病態
・人獣共通感染症で,ヒトでは複数の病型がある.全身性感染症を発症する際,病初期はインフルエンザ様の発熱と倦怠感などの非特異的症状から始まる.主に以下の3つに分類される.
・皮膚炭疽:感染動物の毛や生肉の炭疽菌が,皮膚の切創や擦過創から感染することで生じる.感染部位の水疱などから次第に無痛性の潰瘍,黒色痂皮へ変化する.自然治癒もあるが,1割弱にショックを伴う.適切な治療が行われると致死率は1%程度と低い.
・消化管炭疽(咽頭喉頭型,消化管型):感染動物の加熱不十分な肉の摂取で生じる.致死率は25~60%.
・吸入炭疽(肺炭疽):感染動物の毛などから浮遊した芽胞,あるいはバイオテロの場合は散布された芽胞の吸入により生じる.吸入後の潜伏期間は4日程度で,適切な治療が行われなかった場合は,さらに4日程度インフルエンザ様症状が持続し,ショックや呼吸困難を発症すると24時間以内に死亡する.致死率はかつて9割を超えていたが,支持療法の改善などで46%程度に低下している.
・ほかに注入炭疽(ヘロインの注射による),髄膜炎を生じうる.
・ヒト・ヒト伝播は通常は生じない.皮膚炭疽の浸出液による感染がまれにある.
・体内に入った炭疽菌芽胞は典型的には1~7日で活性化するが,体内に60日以上芽胞の状態で留まる場合がある.このためバイオテロ後の抗菌薬の予防内服,治療による改善後はともに経口薬の単剤に変更して60日間の継続が必要である.
B診断
・ショックを伴うなど全身所見があれば血液,頭痛を伴う場合は脳脊髄液(CSF:cerebrospin
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