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治療

ジカウイルス感染症(ジカウイルス病と先天性ジカウイルス症候群) [■4類感染症]
Zika virus infection(Zika virus disease,congenital zika virus syndrome)
忽那賢志
(大阪大学大学院教授・感染制御学)

治療のポイント

・ギラン・バレー症候群,脊髄炎,脳炎などの合併症が報告されている.

・妊婦が感染することで児が小頭症などの先天性ジカウイルス感染症に罹患しうる.

・対症療法のみでほぼ全例治癒する疾患である.

◆病態と診断

A病態

・フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる感染症である.

・主に蚊の媒介によって感染するが,それ以外の感染経路として母子感染,性交渉による感染,輸血による感染が報告されている.妊婦が感染すると胎児が先天性ジカウイルス感染症を発症することがあり,小頭症以外にも,白内障,聴力障害などさまざまな先天異常がみられることがある.

B診断

・潜伏期は2~7日であり,5~8割は不顕性感染である.皮疹,結膜充血,関節痛,頭痛などの症状が特徴的である.

・診断は主にPCR法による病原体の遺伝子の検出,またはIgM抗体の検出による.PCR法に用いる検体は血清(または全血),尿である.

◆治療方針

 現在のところ,ジカウイルス感染症に対する特異的な治療はない.それぞれの症状に対し対症療法を行う.デング熱との鑑別ができていない時点ではNSAIDsの使用は避けたほうがよい.

Px処方例

 アセトアミノフェン錠 1回10~15mg/kg 発熱時頓服(4~6時間あけて)

■専門医へのコンサルト

・ジカウイルス感染症罹患後に筋力低下がみられた場合,ギラン・バレー症候群の可能性があるため神経内科へのコンサルトを行う.

・妊婦がジカウイルス感染症に罹患した場合,胎児の先天性ジカウイルス感染症の可能性があるため,蚊媒介感染症専門医療機関への紹介を行う.

■患者・家族説明のポイント

・ジカウイルス感染症は重症化することはまれであり,罹患した患者自身はほとんどの場合後遺症なく自然治癒すること.

・国内で蚊が活動する春~秋に罹患した場合は,蚊に刺されることで国内流行につながりうるため,発症から2週間程度は屋外

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