頻度 あまりみない
治療のポイント
・特異的な治療法はないため,対症療法が中心となる.
◆病態と診断
A病態
・日本脳炎は,フラビウイルス科フラビウイルス属の日本脳炎ウイルスによる中枢神経感染症である.
・日本脳炎ウイルスは,蚊(主にコガタアカイエカ)とブタや水鳥との間で維持され,蚊に吸血されることでヒトに感染する.
・日本脳炎ウイルスの増幅動物であるブタの調査では,西日本でウイルス抗体保有率が高い.
・日本脳炎はアジアで広く流行し,3.5万~5万人/年の患者が発生しており,輸入感染症として注意が必要である.
・日本では予防接種の普及により患者数は減少したが,最近10年間に51人の日本脳炎患者が報告されており,決して過去の病気ではない.
・近年の本邦における日本脳炎患者は平均5人/年で,夏から秋にかけて西日本の高齢者に多い.
・ヒトからヒトへの直接感染は報告されていない.
・不顕性感染が多く,感染しても日本脳炎を発症するのは100~1,000人に1人程度とされる.
・潜伏期間は1~2週間とされる.
・典型例では,発熱,頭痛,悪心,嘔吐,めまいなどで発病し,その後に意識障害やけいれんなどの中枢神経症状が出現する.
・死亡率は20~40%とされ,生存者の45~70%に精神障害などの後遺症が残る.
B診断
・西日本の地域で小児や高齢者が夏から秋にかけて中枢神経症状を発症した場合,日本脳炎を鑑別に挙げることが重要である.
・日本脳炎を疑う場合には,抗体検査と遺伝子検査を行う.
・抗体検査では,急性期に血清および髄液,回復期に血清を採取する.
・遺伝子検査では,急性期に血清および髄液を採取する.
・日本脳炎ウイルス遺伝子が検出されなくても,日本脳炎を否定することはできないため,急性期と回復期のペア血清による抗体検査を行うことが重要である.
・急性期と回復期のペア血清で4倍以上の抗体価上昇,IgM捕捉ELISAで特異的IgM抗体