診療支援
治療

レプトスピラ症(ワイル病など) [■4類感染症]
leptospirosis(Weil disease and others)
成田 雅
(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター・感染症内科部長)

ニュートピックス

・日本国内では2022年に37名の感染が報告され,うち12名が沖縄県の症例であった.

・2022年10月には沖縄県で16年ぶりの死亡例が報告された.沖縄本島北部,八重山地方の河川での活動歴に注意.

治療のポイント

・疑った場合は必要な検査を行いながら抗菌薬治療を開始する.

◆病態と診断

A病態

Leptospira interrogansにより生じる世界最大の人獣共通感染症(年間約100万人罹患し,約6万人が死亡している).螺旋状かつ両端が鈎状の病原体が体内へ侵入し発症する.

・病歴では,「都会(雑居ビルのネズミ)」「農場(家畜・糞尿との接触)」「熱帯(洪水,河川でのレジャー)」など,汚染された水や土壌,動物との接触歴を明らかにする.

・典型的には潜伏期間(2~10日),敗血症期(4~7日),間歇期(1~3日)を挟んでの免疫反応期(0~30日以上),すなわち「二峰性」の臨床経過をとる.

・発熱,頭痛,眼球充血(「眼が熱い」訴え),筋肉痛などの症状から積極的に疑う.軽微な症状,無症候,無菌性髄膜炎,異型肺炎,ぶどう膜炎などの非典型例は見過ごされる一方で,腎機能障害,肺胞出血,多臓器不全,致死的な経過をとる重症型(黄疸出血性レプトスピラ症,「ワイル病」)など多彩な経過をとる.治療開始後に生じる悪寒戦慄,血圧低下を伴うJarisch-Herxheimer(JH)反応にて本疾患が想起される.

・日本では感染症法では4類感染症に分類され届出を要する.

B診断

・培養:全血,髄液,尿をレプトスピラ培養培地(コルトフ培地あるいはEMJH培地)を用いる(感度5~50%,特異度100%).

・血清学的検査:顕微鏡下凝集試験法(MAT:microscopic agglutination test)が血清型検査の判明に必要.

・遺伝子検査:全血,尿,髄液を用いたPCR法など(治療開始前に提出).

◆治療方針

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