頻度 あまりみない
治療のポイント
・ワクチン接種による予防効果が大きい感染症である.
・小さな創傷でも発症しうるため,ワクチン未接種あるいは接種歴が不明な場合は破傷風の発症予防のため,破傷風トキソイドワクチンを接種する.
・破傷風感染を疑った時点で直ちに治療を開始することが重要である.
・治療経過中のけいれんや呼吸停止の際に気管挿管が必要になるため,常に麻酔科医,集中治療専門医と連携して対応することが重要である.
◆病態と診断
A病態
・破傷風は,Clostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患である.破傷風菌は,偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌であり,芽胞の状態で土壌などの環境中に広く分布している.
・外傷からの感染以外に,動物の口腔内や腸内などからも菌が検出され,動物咬傷例もある.
・破傷風菌は創傷から侵入し,嫌気状態の創傷部で発芽・増殖し,毒素を産生する.毒素は血行性,リンパ行性に末梢神経終末に到達し,最終的に抑制性神経伝達の減少につながる.その結果,末梢運動神経,脳神経さらに交感神経が過活動状態となる.潜伏期間は3~21日(平均10日)である.
・臨床分類は全身性破傷風,限局性破傷風,頭部破傷風,新生児破傷風の4タイプに分類される.全身性破傷風は4期に分類され,第1期の全身倦怠感,咽頭痛,頭重感などの症状から始まり,第2期の開口障害,痙笑,嚥下障害,発語障害,歩行障害,第3期の交感神経過緊張,さらに呼吸困難,後弓反張,強直性けいれん,呼吸停止などへの進行,第4期の回復期まで数週間を要する.第2期の開口障害から第3期の全身けいれん発作の時間(オンセットタイム)が48時間以内のものは予後不良で,死亡率は約50%である.
B診断
・わが国では年間130例前後の報告がある.定期接種の開始された1968年より以前に生まれた破傷風トキソイドワクチン未接種世代の高齢者に多い
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