頻度 あまりみない
治療のポイント
・治療に用いる抗菌薬は限定されており,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が感染症の原因菌であるかどうかを慎重に判断する.
・治療の有無にかかわらず,院内での感染伝播が生じる可能性が高いことから厳重な感染対策が必要である.
◆病態と診断
A病態
・腸球菌として,中心静脈カテーテル関連血流感染症,感染性心内膜炎,尿路感染症,腹腔内感染症,化膿性脊椎炎,急性(細菌性)前立腺炎の原因となる.
・重症感染症,また,難治性感染症となる場合がある.
・院内で感染伝播する場合がある.
・2020年の厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)の検査部門(入院検体)の報告では,VREの分離率は0.04%であった.
B診断
・感染症として問題になるのは,Enterococcus faecalis,E. faeciumのいずれかである.まれに,E. gallinarum,E. casseliflavus,E. flavescensが分離される場合もある.
・これらの腸球菌が分離・同定され,①血液,腹水,胸水,髄液,その他の通常無菌的であるべき検体ではバンコマイシンのMIC値が16μg/mL以上,②喀痰,膿,尿,その他の通常無菌的ではない検体ではバンコマイシンのMIC値が16μg/mL以上,かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合,VRE感染症として届出をする感染症法での基準となる.
◆治療方針
ほかに原因菌や感染巣がないか十分に検索をしてVRE感染症である(可能性が高い)と判断したのちに治療をする.また,そもそもVREと判定されるためには薬剤感受性試験を行うわけであり,VREであったとしてもE. faecalisであればペニシリン系抗菌薬が有効な場合もあるので,まずは薬剤感受性試験結果を確認する.
AVRE感染症に対する治療
Px処方例 バンコマイシン耐性E. faecium,もし
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