頻度 あまりみない
治療のポイント
・特徴的な臨床症状で百日咳を疑ったら迅速診断を実施し,直ちに抗菌薬を開始する.
・成人の百日咳では慢性咳嗽のみで典型的な症状を呈さない場合があり,周囲への感染源となるため,疑いのある場合は抗菌薬治療が必要である.
・新生児・乳児では,最初は軽症でも次第に無呼吸発作や呼吸停止を生じたり,肺炎などの合併症を併発し重症化したりすることがあるため注意が必要である.
◆病態と診断
A病態
・百日咳菌(Bordetella pertussis;B. pertussis)はグラム陰性短桿菌で,グラム染色ではインフルエンザ菌と類似する.
・麻疹ウイルスと同程度の高い伝播力を有す(基本再生産数R0=16~21).
・潜伏期間は7~10日である.
・典型的な百日咳は,①カタル期(約2週間持続):普通のかぜ症状で始まり,次第に咳の回数が増えて程度も激しくなる.②痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳(痙咳)となる.これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート),続いて,息を吸うときに笛の音のようなヒューという音が出る(笛声;whoop).このような咳嗽発作が繰り返すことをレプリーゼとよぶ.しばしば咳嗽後に嘔吐を伴う.③回復期(2,3週~):時折忘れた頃に発作性の咳が出る.全経過約2~3か月で回復する.
・成人の百日咳では咳が長期にわたって続くが,典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく,やがて回復に向かう.ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要である.
B診断
・特徴的な症状と,周囲の感染状況や接触歴から考慮する.
・病原体検査には培養検査,血清学的検査,遺伝子検査,イムノクロマト法がある.
・鼻腔・咽頭ぬぐい液の培養検査では発育の栄養要求が高く,Bordet-Gengou血液寒天培地などの選択培地が用いられる.
・従来のPCR法に加えて,鼻腔・咽頭ぬぐ
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