頻度 あまりみない
治療のポイント
・特異的治療法はない.
・予防として生涯2回以上のワクチン接種が推奨される.
・曝露時は接触後72時間以内であれば麻疹ワクチンを0.5mL皮下注射で投与する.ワクチン不適当者や,すでに72時間以上経過している場合には,曝露6日以内にγ-グロブリン製剤1回を筋肉内注射する.
◆病態と診断
A病態
・麻疹は,パラミクソウイルス科パラミクソウイルス亜科モルビリウイルス属に属す麻疹ウイルスによって発症する.ウイルスはエンベロープを有する1本鎖RNAウイルスである.
・空気感染,飛沫感染,接触感染,経胎盤感染で感染伝播する.基本再生産数(感受性者の集団で,1人の患者が平均何人に感染させるかを表す数字)は12~18ときわめて高い.
・2015年にはWHO西太平洋地域の麻疹排除認証委員会より日本は麻疹排除状態であることが認定されており,それ以後,土着株は確認されていない.現在日本で検出されるのは諸外国からの輸入株由来であるが,海外の多くの国で患者数が増加しており,国内外からの観光客などによる伝播が懸念される.発生数は2020年以降は漸減し500例未満である.
・潜伏期間は,麻疹ウイルスに感染後,約10~12日間である.
・初期症状は,発熱とカタル症状(咳,鼻水,眼球結膜の充血など)で,これらが数日続いたあと,いったん解熱傾向を認め,同時に口腔内にコプリック斑が認められる.すぐに再び高熱となり,同時に融合傾向のある全身性発疹が出現する.発疹は小鮮紅色斑から始まり,次第に暗紅色となる.耳後部,頸部,顔面から始まり,体幹,上下肢の順に拡大する.発疹は色素沈着を残す.臨床診断例は発熱,発疹,カタル症状の3つを認める.一方修飾麻疹(検査診断例)は発熱,発疹,カタル症状のいずれかを認め,かつ検査診断されている場合をいう.
・約30%に中耳炎,肺炎,脳炎など何らかの合併症をきたす.
・遅発性