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治療

感染性胃腸炎 [■5類感染症-定点把握]
infectious gastroenteritis
宇野健司
(南和広域医療企業団南奈良総合医療センター・感染症内科部長)

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GLJAID/JSC感染症治療ガイド2019

GL抗微生物薬適正使用の手引き第二版(2019)

治療のポイント

・感染性胃腸炎という診断は,ほかに明らかな病態がないということをもって初めて診断できる.

・嘔気・嘔吐のみの場合には胃腸炎の診断は最後に考え,急性心筋梗塞や頭蓋内病変など緊急性疾患に伴う他の症状(red flag)がないことを確認する.

・感染性胃腸炎の原因微生物は流行性があり,国立感染症研究所感染症情報センターなどの情報機関から適宜確認を行う.

・便検査は目的菌により方法が異なり,培養をみる場合とトキシンをみる場合がある.培養に関しては培養条件が異なることもあり,疑う菌種を記載して検体を提出する.病原性大腸菌など,ベロトキシン検査が診断に必要なものもある.

・多くはウイルス性であり,基本的に抗菌薬は不要.血便を伴う重症例・免疫不全・合併症リスクのある患者・渡航者の場合に抗菌薬処方を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・感染性胃腸炎は細菌またはウイルスなどの感染性病原体による嘔吐,下痢を主症状とする感染症であり,毎年秋から冬にかけて流行する.

・この感染症は5類感染症定点把握疾患に位置づけられており,診断した定点医療機関医師は週単位で翌週の月曜日に保健所に届け出る必要がある.集計された統計データは国立感染症研究所感染症情報センターや,各都道府県の衛生研究所のデータから確認することができる.

・感染性胃腸炎の原因微生物はウイルスから寄生虫まで多種多様で,それぞれの微生物ごとに好発年齢・好発時期・治療は異なる.本項では主に成人で発生する感染性胃腸炎を取り扱う.検査に関しての詳細は別書を参考にしていただきたい.

B診断

下痢・嘔吐などの消化器症状があり,通常の排便回数よりも多くなった場合に疑われる.嘔吐の症状のみの場合には,急性心筋梗塞や頭蓋内病変など,緊急性のある胃腸炎以外の疾患徴

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