頻度 よくみる(小児)
治療のポイント
・対症療法が中心となる.
・発症する年齢,性別で本症に対する視点は異なる.
・ワクチンはない.
◆病態と診断
A病態
・伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19を原因病原体とし,小児(5~10歳)を中心として流行する発疹性感染症で,リンゴ病ともいわれる.晩冬から春に多く,2年間の流行と3年間の間欠期を繰り返している.主な感染経路は飛沫感染であるが,血漿分画製剤による感染や経胎盤感染がある.
・原因ウイルスは赤血球系前駆細胞を標的とし,血液型P抗原を受容体とする.感染して6~10日後にウイルス血症を呈し,この時期に半数がインフルエンザ様の症状を認めるが,半数は不顕性感染となる.
・一般的には予後良好である.いったん感染すると終生免疫が得られ,成人での抗体保有率は50%程度とされる.
・小児では紅斑が主な症状となり,頬部の紅斑に始まり,その後1~2日遅れて四肢に融合傾向を示すレース状紅斑がみられる.紅斑は1週間以内に改善することが多い.
・成人では紅斑を認めることは少なく,関節炎(関節痛・関節腫脹)を認めることが多い(約80%).関節炎は通常1か月以内に治癒し,関節破壊を残すことはない.まれに非血小板減少性の紫斑を伴う.
・妊婦が罹患すると胎児水腫となり,流産や死産の原因となることがあるため,不顕性感染が問題となる.
・免疫不全患者が罹患した場合,数年間の持続感染の結果として慢性骨髄不全が起こることがある.
B診断
・PCR法によるヒトパルボウイルスB19DNAの検出(適用外)や同特異抗体測定(急性期IgM抗体の検出またはペア血清によるIgG抗体価の有意な上昇の確認)を実施する.
・網赤血球の著減が特徴的で,ヘモグロビンが低下する.また,リンパ球減少,補体低下,抗核抗体陽性および抗DNA抗体陽性を呈することもある.全身性エリテマトーデスや関節リウマチとの鑑別が必要となる.