頻度 情報なし(特定の疾患を指す病名ではないため.真の不明熱はまれとされている)
◆病態と診断
A定義
・実臨床では,局所症状を伴わない発熱患者にしばしば遭遇することがあり,“不明熱”とよばれることがある.しかしながらこの表現は正しくなく,不明熱は“有熱性疾患を鑑別するためのさまざまな精査が行われてもなお発熱が続く状態”のことを指す.
・古典的には,表1図のようにPetersdorfおよびBeesonが1961年に提唱した定義がある.さらに1991年には,DurackとStreetによって基礎疾患や場面に合わせて4つに分類された(表2図).しかしながら,時代とともに診断可能な疾患が増え,また疾患概念そのものも変化することなどから,不明熱を細分化して考えるのではなく,「一般臨床で行える範囲で検査・鑑別をしてもなお発熱の原因がわからない状態」とするのが適切であろう.
B病態
・当初は不明熱とされていてのちに診断がつく病態で頻度が高いものには,感染症,非感染性炎症性疾患,悪性腫瘍などがある.一方で,実際には精査をしても診断がつかない症例も2~3割認められる.
C診断
・臨床検査や医療面接・身体診察を駆使して自施設内で診断できる病態を把握しておくとともに,自施設では診断できない疾患については専門医に相談することが重要である(表3図).
・不明熱の鑑別には病歴聴取や疫学情報の収集が重要であり,旅行歴,動物との接触歴,免疫抑制状態の有無,抗菌薬を含む薬物投与歴,局所所見の有無を十分に聴取する.
・早期に対応が必要な病態である急性感染症を除外するために,胸部X線,尿培養・尿定性検査,血液培養の3つの検査を行うべきである.これらの検査をすることで,入院・外来問わず頻度が高い感染症である肺炎,尿路感染症,ならびに重症感染症である菌血症を診断することができる.局所症状が明らかでなく感染フォーカスがわからない場合で