診療支援
治療

回虫症
ascariasis
倉井華子
(静岡県立静岡がんセンター・感染症内科部長)

頻度 あまりみない

GL寄生虫症薬物治療の手引き-2020-改訂第10.2版

治療のポイント

・診断した際は内服治療を行う.

・ピランテルパモ酸塩が第1選択薬である.

・渡航歴や有機野菜摂食などが感染の原因となるため,感染経路を推定し再発予防に努める.

・重症化することはまれであるが,多数の回虫寄生例では腸閉塞や胆管迷入など外科的処置が必要となる場合がある.

◆病態と診断

A病態

・回虫はヒトを終宿主とする寄生虫である.

・土壌の幼虫包蔵卵を経口摂取することにより感染が成立する.

・1950年代以降感染率は低下し,近年は0.01%以下と減少している.

・世界中に蔓延する寄生虫疾患であり,渡航者の腹痛・食欲不振・好酸球増多では本疾患を疑う.

・有機野菜や輸入食品が原因となる国内感染事例の報告も,まれながらある.

B診断

・渡航歴や喫食歴,消化器症状,好酸球増加などが疑うポイントとなる.

・糞便の虫卵を顕微鏡下で観察する.虫卵数が多いため直接塗抹法で診断できることが多い().

◆治療方針

 回虫の感染者に対しては,無症状であっても薬物治療を行う.

Px処方例

 ピランテルパモ酸塩(コンバントリン)錠(100mg) 1回10mg/kg 単回

 単回投与の効果は90%以上である.治療1か月後に再度糞便検査を行い,効果判定する.

 妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないが,治療の有効性が危険性を上回る場合は投与する.

■専門医へのコンサルト

・多数の回虫寄生で腸閉塞となった症例,胆管に迷入した症例は,外科や内視鏡科に処置を依頼する.

■患者説明のポイント

・経口感染が感染経路となる.生鮮食品をよく洗い加熱することと手洗いが予防策になる.

■看護・介護のポイント

・回虫卵は土壌で成熟しなければ感染性をもたないため,ヒトの便からの直接感染はない.特別な感染対策は不要である.



文献

1) 日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新

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