診療支援
治療

放射線肺炎
radiation pneumonia
濵田直樹
(福岡大学准教授・呼吸器内科)

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治療のポイント

・放射線治療後1~3か月で発症することが多く,症状が強い場合や進行する場合はステロイド治療を行う.

・放射線照射野外に進展する場合は,重症化のリスクがあり,早期の治療開始を検討する.

◆病態と診断

A病態

・肺癌,食道癌,乳癌,縦隔腫瘍などに対する放射線治療の有害事象として起こる放射線性肺障害である.

・放射線照射により傷害された肺組織では,急性期から亜急性期には主に間質に炎症が起こり放射線肺炎(放射線肺臓炎)とよばれ,晩期には線維化をきたし放射線肺線維症とよばれる.

B診断

・放射線照射終了後6か月以内(特に照射後1~3か月)に発症することが多いが,6か月以上経ってから発症することもある.

・胸部X線やCTにて,放射線照射野に一致した非特異的なすりガラス影や斑状影を認める.照射野を反映して正常肺との境界が直線状となることが多い.

・時に照射野外や対側肺に広がる場合があり,一部は重症となり,1~2%は致死的となるため注意が必要である.

・乳癌の場合は,接線照射で起こる器質化肺炎にも留意する.

・軽度の間質性変化がある場合や,もともと間質性肺炎がある症例では,重症化のリスクが高いため,放射線治療開始前の胸部CT画像を確認する.

◆治療方針

 放射線治療の内容(治療開始・終了時期,照射範囲,実際の照射野,照射線量)を確認し,臨床像から米国National Cancer Instituteの「有害事象共通用語規準(CTCAE)version 5.0」に基づいて重症度を評価する.治療方針は重症度を参考に判断する.

 グレード1:無症状,画像変化のみ

 グレード2:軽度の症状

 グレード3:高度の症状,酸素投与を要する

 グレード4:生命を脅かす,緊急処置を要する

 エビデンスのある標準的な治療法は確立されていないが,急性・亜急性の経過を示す場合にはステロイド治療を行い,呼吸状態に合わせ

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