診療支援
治療

誤嚥性肺炎
aspiration pneumonia
山岸由佳
(高知大学教授・臨床感染症学講座)

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GL成人肺炎診療ガイドライン2017

治療のポイント

・肺炎の重症度や耐性菌のリスクの有無を評価する.

・敗血症(sepsis)の評価を行う.

・上記に基づき抗菌薬を選択し,腎機能や肝機能に応じて用量を調整する.

・原因菌が判明した際は,検出された菌の薬剤感受性を参考に標的治療を行う.抗菌薬が投与されている場合はより狭域な抗菌薬へ変更する.

◆病態と診断

A病態

・嚥下性肺疾患は,(通常型)嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎),びまん性嚥下性細気管支炎,メンデルソン症候群,胃切除後嚥下肺炎があり,誤嚥性肺炎は明らかな誤嚥,または誤嚥が強く疑われる病態の確認,または嚥下障害の存在と肺炎所見によって診断される.

・嚥下障害患者が必ず誤嚥性肺炎を発症するということではない.

・嚥下障害をきたしやすい病態は,脳神経疾患(脳梗塞,認知症など),筋疾患,胃食道逆流症,呼吸器疾患,口腔異常,気管切開や経鼻胃管留置,加齢(要介護度が高く自立困難な高齢者)などである.

・低栄養やサルコペニア,先行するウイルス感染症は誤嚥性肺炎の発症リスクである.

・原因微生物は細菌で口腔内に常在する口腔レンサ球菌が多い.

B診断

・嚥下障害の存在,臨床症状,炎症反応(白血球数増多),胸部画像検査所見で新たな陰影を認める場合に診断される.

・高齢では肺炎症状である発熱咳嗽胸痛呼吸困難感が認められにくい場合があり,食思不振不活発などもサインである.

・重症度はA-DROPシステムが参考になる.

・原因菌および薬剤感受性検査を行うために喀痰の塗抹検査・培養検査尿中抗原検査を行う.また敗血症の評価のために血液培養を採取する.

◆治療方針

 治療は抗菌化学療法に加え,抗菌薬以外の治療として口腔ケア,理学療法,嚥下リハビリテーション,胃食道逆流予防,嚥下改善薬投与,上半身挙上,栄養改善,ワクチン接種を行う.また誤嚥しやすい要因を可能な限り除

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