診療支援
治療

膿胸
empyema
倉井大輔
(杏林大学教授・総合医療学)

頻度 ときどきみる

治療のポイント

・胸水穿刺で膿胸と診断した場合は,胸腔ドレナージと抗菌薬治療を行う.

・治療効果が不十分な場合は,外科的治療を考慮する.

◆病態と診断

・肺炎・外傷などが原因で胸腔内に細菌・抗酸菌などの感染が波及し,胸水からを認めた場合を膿胸とよぶ.

・膿胸は,次のいずれかの所見(pH<7.2もしくは,グラム染色もしくは培養で微生物の証明)を認めた胸水で,胸腔内の細菌感染に伴う場合である.

・膿胸と鑑別を要する疾患として,肺炎に起因した肺炎随伴性胸水がある.

・肺炎随伴性胸水は,胸水量,胸水中のpH・LDH・糖などを用いて,抗菌治療のみで治療可能な単純性肺炎随伴性胸水と,胸水のドレナージが必要な複雑性肺炎随伴性胸水に分類される.

◆治療方針

A初期対応

 複雑性肺炎随伴性胸水と膿胸の治療は同一で,胸腔ドレーン挿入に加え,抗菌薬投与を行う.

‍ ●治療の変更の指標 ドレーンチューブからの排液量の減少,解熱などで有効性を評価する.症状が改善しない場合は胸部CTでドレーンチューブの位置不良や隔壁形成を確認する.また,必要時は新たに胸腔穿刺を行い清潔操作で得た胸水検査を行う.その際には,結核感染や癌性胸膜炎を考慮し,抗酸菌培養や細胞診を行う.

B抗菌薬の選択

 市中感染では,肺炎球菌と嫌気性菌を含む口腔内常在菌をターゲットに点滴の抗菌薬を開始する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)アンピシリン・スルバクタム(ユナシン-S)注 1回3g 1日4回 点滴静注

2)レボフロキサシン(クラビット)注 1回500mg 1日1回 点滴静注 +

  メトロニダゾール(アネメトロ)注 1回500mg 1日3回 点滴静注(βラクタム系のアレルギー時)

 院内感染症例や免疫不全者で,緑膿菌やMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の可能性がある

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?