頻度 ときどきみる
治療のポイント
・エビデンスのある治療の判断基準はなく,発症や急変を予見する方法もない.
・実地臨床では,肺虚脱度だけでなく,発症からの時間経過と症状の進行を加味して気漏状況を推測し,治療の要否・緊急性を判断する.
・初期治療はいわば対症療法で,目的は肺再膨張による症状緩和である.気漏停止は患者自身の創傷治癒機転に依存する.
・挿入と同じか,それ以上にドレーン管理が重要.
・胸腔ドレナージのトラブル・事故はまれでない.未熟・不安なら専門医へコンサルトする.
・認知症などで訴えが乏しい高齢者の外傷性・自然気胸を見逃さないようにする.
◆病態と診断
A病態
・気胸は胸腔に余剰気体がある状態.
・胸膜伸縮時に痛みや咳があり,虚脱が進むと換気不全で呼吸苦となる.虚脱固定すると症状が減り,無症状の場合もある.気胸には重症度分類はない.
・自然気胸は安静でも発症し,発症要因は不明.
B診断
・症状と立位正面胸部X線で,ほぼ診断可能(低階調モニタでは見逃しあり).立位不能時は側臥位撮影かCT.
・要因別に外傷性,医原性,自然と分け,自然気胸はさらに原発性と続発性に分けるが,初期治療は共通.原因の精査は初期治療後でよい.
・CTは鋭敏で見逃しを防ぐが,まれにCTでも鑑別不能な巨大肺嚢胞がある.
・CTは初期治療には必須でなく,原因疾患精査目的なら,虚脱が改善した時期での実施がよい.
・虚脱度分類は複数あるが,いずれにせよ気漏や症状の重篤度を示すものではない.おおむね,軽度:一部の肺外縁が見える,重度:肺内血管影が完全消失,中等度:それ以外,でよい.
◆治療方針
症状が進行する緊張性気胸,両側同時気胸では直ちにドレナージを行う.虚脱が軽度で症状の進行がなければ経過観察も可(発症~初診が数時間以内なら即断は禁物).虚脱が高度または進行中,あるいは呼吸苦があれば持続ドレナージを行う.穿刺脱気は一時しのぎで,選択場