頻度 あまりみない
治療のポイント
・気腫の範囲を把握し,臓器損傷を疑うときは専門医にコンサルトする.
・ほとんどの特発性縦隔気腫は保存的治療で治癒する.
◆病態と診断
A病態
・外傷性縦隔気腫と非外傷性縦隔気腫に分けられる.
・外傷性縦隔気腫には,鋭利なものによる気道損傷,義歯,魚骨などによる食道損傷と鈍的胸部外傷での圧損傷がある.気管支鏡,消化管内視鏡での処置による医原性のものもある.
・非外傷性縦隔気腫には,嘔吐による食道破裂,肺胞内圧上昇により気管支付近の肺胞が破裂するものがある.
・肺胞内圧上昇によるものには,慢性呼吸器疾患に続発する場合と運動後や大声を出したときなどに起こる特発性縦隔気腫がある.
B診断
・頸胸部の疼痛,頸部皮下気腫が多く認められる.
・胸部X線写真で縦隔に気腔,胸膜の線を認めれば診断可能である.胸部X線写真では確認困難な例もあり,食道周囲のニボーなど食道破裂所見,縦隔気腫の程度を確認するため胸部CTは有用である.
・外傷性,医原性のものにはしばしば臓器損傷が存在するため,食道造影などの検査が必要となる.
◆治療方針
外傷性,医原性のものは,損傷部位と程度により治療法を検討する.
続発性縦隔気腫は,ベースに慢性呼吸器疾患があるので,呼吸状態を把握したうえで治療方針を決定する.
特発性縦隔気腫において,嘔吐など食道破裂を誘発するエピソードがない場合,胸部CTで食道周囲にガス像がない場合,発症より1日程度時間が経過したあとも炎症反応が軽度上昇である場合は食道破裂の可能性は低く,安静と鎮痛による保存的治療で治癒する.
気胸を合併した縦隔気腫には胸腔ドレナージが必要となる.気胸がなく,食道破裂が疑われない軽症例では,必ずしも入院による治療を必要とせず,頸部腫脹増大もしくは呼吸困難増悪時に再診を指示し,外来治療が可能である.疼痛が強い場合,縦隔気腫の範囲が広い場合は,入院による観察を