診療支援
治療

低血圧症
hypotension
佐藤敦久
(国際医療福祉大学三田病院・副院長)

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◆病態と診断

A病態

・低血圧とは,めまい失神などの症状が現れるほど血圧が低い状態をいう.

・一般的に収縮期血圧100mmHg以下の状態で,拡張期血圧は通常問題にされない.本態性低血圧と起立性低血圧,急性低血圧などに分類される.

・本態性低血圧:原因となる明らかな疾患がなく血圧の低い状態が継続し,しばしばやせ型の虚弱体質者に認める.両親も低血圧のことが多い.女性に多く,遺伝的な因子に生活,食事,運動習慣が重なり発症する.

・起立性低血圧:臥位から立位などへの急な体位変換によって,3分以内に収縮期血圧が20mmHg,拡張期血圧が10mmHg以上低下する場合をいう.年齢とともに増加し,75歳以上では約30%に認められる.自律神経機能の異常,薬物の影響,糖尿病などの代謝疾患,静脈系への血液貯留など血行動態の異常などにより発症する.

・急性低血圧:心筋梗塞,大量出血,重症感染症,薬剤性ショックなどにより急速に血圧が下がった状態をいう.ショック症候群ともよばれる.直ちに医療機関で治療を受ける必要があり,対応が遅れると生命にかかわる場合もある.

B診断

・本態性低血圧:最も重要なのは,低血圧の原因となる基礎疾患がないことを確認することである.また慢性的に血圧が低いことを,診察室血圧だけでなく家庭血圧や24時間血圧計などでチェックしておく.

・起立性低血圧:坐位から立位になった際の,血圧の急激な低下を証明する.チルトテーブルテストは診断に用いられる試験で,傾けられたテーブルに横たわり水平から立位への動きを模倣する.

・急性低血圧:内科的エマージェンシーである.何らかの原因で急速に血圧が低下していることが確認できたら,できるだけ早急に適切な治療を開始する.

◆治療方針

 本態性低血圧の場合,一般に積極的な治療を要するケースは少ない.ただし自覚症状が強く,日常生活に支障があるような場合は慎重に薬

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