診療支援
治療

心房細動
atrial fibrillation
井上耕一
(国立病院機構大阪医療センター・不整脈センター長)

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治療のポイント

・心房細動は,年齢,症状の強さ,脈拍数,基礎疾患,心機能,塞栓症のリスクなどにより必要とされる治療内容が違うため,患者ごとに方針を決める.

・リズムコントロールとレートコントロールの方針は予後が同様とされてきたが,初期の心房細動においては,リズムコントロールのほうが予後はよいことがわかった.

◆病態と診断

A病態

・心房細動は,心房が300~600回/分で不規則に興奮する不整脈である.この興奮は房室結節を経由して心室に不規則に伝わり,脈が不整となる.

・心房細動は,老化や心房筋の負荷,体質などによる心房筋の線維化・肥大・細胞数減少,心房の拡大・炎症,イオンチャネルの分布異常などの「心房の劣化」が基質となる.

・心房細動は進行性の病気であり,心房細動自体が心房リモデリングの原因となり,その進行を助長する.

・①動悸・息切れなどの症状による生活の質低下(ただし半数は無症状),②心房内の血液のうっ滞に伴い左心耳内に形成された血栓による心原性脳塞栓症・全身性塞栓症(非心房細動患者の3~5倍),③心房収縮の消失・脈不整・頻脈による左心機能低下や心不全(4人に1人が発症)などの原因となる.これらの予防・管理が治療の目的となる.

B診断

・12誘導心電図でP波を認めないこと,f波(細動波)を認めること,QRS波間隔が絶対不整(どの間隔も同一でない)であることから診断できる.

・持続性心房細動(1週間以上持続)の診断は容易であるが,発作性心房細動(ときどき発症し自然停止する)は,発作中に心電図を記録しなければ診断ができないため,ホルター心電図(24時間~2週間),携帯型心電計,スマートウォッチの心電計などで発作時の心電図を記録する必要があり,時に診断が難しい.

・心房細動の診断がされた場合,基礎疾患・併存疾患の検索を行う.甲状腺機能異常や心臓弁膜症,心筋症などの基礎心疾患を認めること

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