診療支援
治療

心房粗動
atrial flutter
夛田 浩
(福井大学教授・循環器内科学)

頻度 ときどきみる

治療のポイント

・薬剤(β遮断薬,非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)によりレートコントロール(心拍数コントロール)を行うが,リズムコントロール(洞調律化,根治を含む再発予防)に高い効果をもつ薬剤はない.

・カテーテルアブレーションは,通常型心房粗動に対するリズムコントロールの第1選択治療である.アブレーションは,非通常型心房粗動においてもリズムコントロールにきわめて有用である.

・心房細動に準じて塞栓症リスクの層別化を行い,抗凝固療法を施行する.

◆病態と診断

A病態

心電図分類上,心房頻拍と心房細動の間に位置する上室頻拍で,60歳以上の男性に多い.肺疾患,高血圧,器質的心疾患,心臓/肺手術後,急性心筋梗塞(急性期)に合併することが多いが,孤立性も存在する.

・下大静脈-三尖弁輪間の解剖学的峡部(CTI:cavotricuspid isthmus)を頻拍回路に含み,三尖弁輪を興奮が旋回するリエントリー性の通常型粗動(反時計方向に旋回するものが時計方向に旋回するものよりも多い)と,それ以外の非通常型粗動に分類される.

・症状は房室伝導に依存する.2:1の房室伝導(心拍数は約150/分)では,動悸,息切れ,時に心不全を呈する.まれに1:1伝導となると血圧低下をきたし,ショック,失神などの重篤な症状を呈する.逆に伝導比が4:1の場合には無症状のことも多い.

・心房粗動に伴う血栓塞栓症,脳梗塞の発生頻度は1.7~7.0%(細動の約1/3の頻度)で,48時間以上粗動が持続した症例でリスクが高くなる.

B診断

・心電図上,240/分以上(240~440/分)の規則正しい粗動波(F波)を認め,心房頻拍と異なり,F波間に等電位線を認めない.心房細動も等電位線を認めないが,その興奮(f波)やQRS波の間隔は不規則である.三尖弁輪反時計方向旋回型粗動では下壁誘導およびV6 で陰性,V1 で陽性の

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