診療支援
治療

QT延長症候群
long QT syndrome
相庭武司
(国立循環器病研究センター・臨床検査部長(大阪))

頻度 ときどきみる

GL遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)(2018)

GL2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン

治療のポイント

・QT延長をきたす2次性因子が存在しない状況でQTc時間≧470ミリ秒の場合はβ遮断薬が適応となる.

・遺伝学的検査は診断のみならず遺伝子型・バリアント別の適切な生活指導(運動制限など)と治療薬の選択に有用である.

・心イベントに性差があり,思春期以降の女性(特にLQT2)は高リスクである.

・家族を含めた患者教育,服薬コンプライアンスの向上に努める.

・高リスク例には植込み型除細動器(ICD)も考慮する.

◆病態と診断

A病態

1.先天性QT延長症候群

・心電図QT延長とT波の形態変化,QRS軸がねじれるような多形性心室頻拍(TdP:Torsade de Pointes)が特徴で,若年者の心臓突然死の原因の1つである.

・意識消失(失神),めまい,動悸などを主徴とするが,無症状で学校・職場検診で心電図異常からみつかる場合も多い.

・発作の誘因は遺伝子型により異なる.KCNQ1(LQT1)は運動中が7割以上,KCNH2(LQT2)は精神的ストレス,起床時,音刺激,妊娠出産などが比較的多く,SCN5A(LQT3)は睡眠中や安静時に生じることが多い.

・無治療の場合,20歳までにLQT1,2の約50%,LQT3で約30%が失神・致死性不整脈を生じる.

2.後天性(2次性)QT延長症候群

・薬剤・徐脈・低K血症などを誘因にQT延長,TdPを発症.普段のQT時間は正常あるいは軽度延長に留まる.

・比較的高齢者,女性に多い.先天性LQTSの遺伝子バリアントが3割程度みつかる.

B診断

1.先天性QT延長症候群

・以下1)~3)のいずれかを満たせば先天性QT延長症候群(LQTS:long QT syndrome)と診断される.

 1)心電図所見,臨床症状,家族歴などから計

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?