診療支援
治療

心筋炎
myocarditis
永井利幸
(北海道大学大学院准教授・循環病態内科学)

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GL2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン

治療のポイント

・急性期における循環維持と進行性の心筋障害を抑制することが治療の基本である.

・循環動態の破綻を伴い,しばしば致死的となる劇症型心筋炎では,早期診断と補助循環の機を逸しない導入が必要である.

・心機能低下が遷延する症例に対しては,心保護薬の導入を行う.

◆病態と診断

A病態

・心筋炎は,心筋を主座とした炎症性疾患であり,さまざまな病態が含まれる疾患群である.主な病因として,感染,薬物への曝露,免疫系の賦活化などがある.近年は,COVID-19ワクチンや免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も少なからず報告されている.

・臨床病型は,急性,慢性活動性,慢性炎症性心筋症(炎症性拡張型心筋症),心筋炎後心筋症に大別される.組織学的には,リンパ球性,巨細胞性,好酸球性,肉芽腫性に分類される.

・ウイルス感染が最多病因と考えられているが,多くは病原ウイルスを同定し得ない.近年は,COVID-19による心筋炎も報告されている.

・慢性活動性心筋炎では,発症から30日以上経過した慢性期においても心筋組織における持続的な炎症細胞浸潤と心筋細胞傷害を認め,経時的な心機能低下を認める.

・慢性炎症性心筋症(炎症性拡張型心筋症)では,心筋組織に持続的な炎症細胞浸潤を伴うが,心筋細胞傷害は認めない.しばしば心室拡大や駆出率の低下を伴う.

B診断

・臨床症状:心症状に先行する感冒様症状や消化器症状を呈する.息切れ,倦怠感,発熱など,非特異的な症状が多い.劇症型では低血圧ショックを呈する.

・血液検査:心筋障害を反映する高感度心筋トロポニンやCK-MBの上昇を認める.慢性活動性心筋炎では,1か月以上遷延する心筋トロポニンの上昇を認める.ペア血清によるウイルス抗体価測定は原則推奨されない.

・心電図では,広範なST上昇,刺激伝導障害など

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