頻度 情報なし
治療のポイント
・心タンポナーデとは心膜腔内に液体が貯留し,心膜腔内の圧が上昇することにより心腔が圧迫され,心臓への血液流入が障害されることによる生命の危機的な状態である.
・心タンポナーデの治療は心膜液を除去することであり,延命治療を希望されない悪性腫瘍の例などを除き,入院下に緊急のエコーガイドによる心膜腔穿刺ならびにドレナージ,あるいは外科的なドレナージを行う.
◆病態と診断
A病態
・少量の心膜液貯留(断層エコーで拡張末期に10mm未満)の最も多い原因は急性心膜炎であり,特発性あるいはウイルス感染による.中等量の心膜液貯留(10~20mm)の原因にはさまざまな疾患の可能性があるが,大量の心膜液貯留(20mm以上)の原因としては悪性腫瘍,結核,甲状腺機能低下を考慮する.
・急速に心膜液が貯留する原因としては鈍的外傷,急性大動脈解離,心筋梗塞後の合併症である心破裂,カテーテルアブレーションやペースメーカ植込みなどの侵襲的な手技がある.
・急速に心膜液が貯留する場合は,心膜液が少量から中等量であっても心タンポナーデを生じる可能性がある.
B診断
・Beckの3徴(血圧低下,心音微弱,静脈圧上昇による頸静脈怒張)は重症の心タンポナーデを示唆する.
・心拍出量低下,ショックの徴候として,不穏状態,頻呼吸,発汗,四肢冷感,末梢のチアノーゼを生じる.頻脈,奇脈(収縮期血圧が吸気時に10mmHg以上低下)も重要な所見である.
・血圧低下,ショック,静脈圧上昇の原因となる心不全,肺塞栓,肺高血圧症や右室梗塞との鑑別を要するが,心タンポナーデの確定診断には心膜液貯留を証明する.
・心エコーが心膜液貯留,心タンポナーデの診断に有用である.拡張早期の右室虚脱,拡張末期の右房虚脱,呼吸性に心室中隔が偏位することで左室と右室サイズが変動する所見(septal bounce)は,心タンポナーデの所見である.