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GL2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン
治療のポイント
・無症状であることがほとんどで,偶然発見されることが多い.
・胸部大動脈瘤は大動脈径55mm以上が,腹部大動脈瘤は大動脈径50mm以上が手術適応となる.
・外科治療として人工血管置換術とステントグラフト留置術がある.双方とも長所と短所を有しており,年齢や解剖学的条件を加味してそれぞれの患者によって選択されるべきである.
◆病態と診断
A病態
・大動脈壁成分(内膜・中膜・外膜の3層構造)が存在する真性瘤,大動脈壁成分がない仮性瘤に大別される.仮性瘤はより破裂の危険性が高い.3層構造が破綻し中膜レベルで大動脈壁が剥離した解離性大動脈瘤も存在する.
・形態から嚢状瘤と紡錘状瘤に大別されるが,両方の形態が混在しているものもある.一般的に嚢状瘤のほうがより破裂の危険性が高い.
・大多数の動脈瘤は動脈硬化性であるが,その他の動脈瘤として,感染性,炎症性,外傷性,先天性がある.
・大動脈基部が拡張した状態は,大動脈基部瘤ではなく大動脈基部拡大と称する.
・大動脈瘤が近接臓器を圧迫することで症状をきたすことがあるが,ほとんどの症例は無症状である.破裂が差し迫った状況では疼痛が生じる.この状況を切迫破裂とよび,降圧・安静のみならず迅速な外科治療が必要になることが多い.
B診断
・確定診断には超音波検査あるいはCT検査,MRI検査が必須である.
・大動脈径が胸部であれば55mm以上,腹部であれば50mm以上が手術適応の目安である.しかし,状況によってはそれ以下の径であっても外科手術が望ましいことがある.
・Marfan症候群やLoeys-Dietz症候群などの遺伝性結合織異常をもつ患者では,大動脈基部拡大が高い確率で発症する.大動脈基部拡大は急性大動脈解離を誘発すると考えられており,家族歴のある患者や患者家族に対して,画像診断によ