診療支援
治療

心臓神経症
cardiac neurosis
上村史朗
(川崎医科大学教授・循環器内科学)

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治療のポイント

・器質的心疾患の鑑別が必須である.特に胸痛患者では,表在冠動脈に狭窄がない場合でも冠攣縮や冠微小循環障害による非閉塞性冠動脈疾患(INOCA)の鑑別を行う.

・心因的背景をもつ本症の治療継続には,患者と医療スタッフとの信頼関係が重要である.

・患者の症状に応じて,抗不安薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いるが,心療内科,精神科へのコンサルトも考慮する.

◆病態と診断

A病態

・心臓神経症は,冠動脈疾患,弁膜症,心筋症,心膜疾患などの器質的心疾患がないにもかかわらず,心臓由来を疑わせる胸部症状を繰り返す疾患である.このため鑑別診断には,詳細な問診,身体診察,心電図心エコー図が必須である.

・本症は,DSM-5診断基準の「パニック障害」,「身体症状症」,「うつ病」などの症状に合致する.DSM-5では,器質的身体疾患が存在していても症状が身体疾患の重症度に見合わない程度に重症である場合には精神医学的診断を当てはめる.

B胸部症状の鑑別診断

・若年女性患者では,原因が心因性疾患である頻度が高い.

・45歳未満の胸痛患者では,呼吸器疾患,消化器疾患の頻度が心臓疾患より高い.

・動悸や脈の乱れを訴える場合には,貧血,甲状腺,副腎疾患(褐色細胞腫)などの血液検査による鑑別とホルター心電図を考慮する.

・吸気や体位によって胸痛が変化する場合には,心膜炎を鑑別する.

・胸痛の特徴が心筋虚血を示唆する場合には,追加検査として冠動脈CTや心筋シンチグラフィが推奨される.この際,検査の適応は,胸痛の特徴,年齢,性別,冠危険因子などの患者背景から検査前確率(PTP:pre-test probability)を勘案することが重要である.また,画像診断で表在冠動脈に狭窄が認められない場合でも,冠攣縮や冠微小血管障害が原因となる非閉塞性冠動脈疾患(INOCA:ischemia wi

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