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GL食道癌診療ガイドライン2022年版 第5版
ニュートピックス
・内視鏡的治療後の狭窄予防としてステロイドの局注と経口投与の効果を比較するJCOG1217試験が公表された.
・切除不能進行・再発食道癌の化学療法レジメンが1次・2次・3次療法までアルゴリズム化されている.
・「食道癌取扱い規約(第12版)」が2022年9月に発刊されており,改訂内容を参照すること.
治療のポイント
・ステージ0/Ⅰ:0(Tis,上皮内癌)とⅠa(T1a)には侵襲の少ない内視鏡治療が選択される.広範囲の内視鏡切除後に狭窄予防のためにステロイド治療を行う.
・粘膜下浸潤癌(T1b)でⅠb期では手術あるいは化学放射線療法を行う.
・ステージⅡ/Ⅲ:術前化学療法+根治切除が推奨されている.
・ステージⅣ:Ⅳa期では化学放射線療法が,Ⅳb期では化学療法が選択される.
◆病態と診断
A病態
・本邦の食道癌の組織型は扁平上皮癌が圧倒的に多い.
・食道扁平上皮癌の危険因子は飲酒と喫煙であり,両者で危険性がさらに増加する.アルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素2型に遺伝子多型が存在し,発癌リスクと関連する.
・食道腺癌は胃食道逆流症に起因するバレット上皮が発生母地となり,リスクとして高度肥満,喫煙などの関与が報告されている.
・本邦の2019年の食道癌死亡者数は11,619人で,全悪性新生物の約3%に相当する.男女比は5.4:1,年齢は60~70歳代に好発する.
・占拠部位の頻度は胸部中部食道が約半数と最も多い.
・固有粘膜層までにとどまる癌〔T1a-EP(上皮内)/T1a-LPM(粘膜固有層)〕のリンパ節転移はきわめてまれであるが,粘膜筋板浸潤癌(T1a-MM)・粘膜下層微小浸潤癌(T1b-SM1)は転移リスクが10%超となり,粘膜下層200μmより深く浸潤するSM癌ではリンパ節転移のリスクが30~50%程度と高く