診療支援
治療

吸収不良症候群
malabsorption syndrome
石原俊治
(島根大学教授・内科学第二)

◆病態と診断

A病態

・吸収不良症候群は,食事中栄養素の腸管からの吸収障害が誘因となって引き起こされる疾患群の総称である.本症候群の病態には,①消化酵素による消化障害,②小腸粘膜の異常による吸収障害,③腸管で吸収された栄養素の輸送経路障害などが関連している().

B診断

・症状は下痢体重減少全身倦怠感脂肪便浮腫貧血症状口角炎皮膚炎末梢神経障害など多彩である.

低蛋白血症,低コレステロール血症,貧血ビタミン欠乏,電解質・微量元素の異常などを血液検査で確認する.

CT腹部超音波検査による小腸壁の状態把握,バルーン内視鏡カプセル内視鏡による小腸粘膜病変の有無,小腸粘膜生検による病理組織検査を行う.

・特殊検査としては,ズダンⅢ染色(脂肪便),α1-アンチトリプシンクリアランス試験(便中蛋白漏出),D-キシロース試験(小腸吸収能),PFD(pancreatic function diagnostant)試験(膵外分泌機能),schilling試験(ビタミンB12 吸収)などがある.

◆治療方針

 早期に低栄養状態を評価し,対症療法を行いながら,原因となっている病態について検査を進め,診断後は原疾患治療を開始する.

A経腸栄養

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)エレンタール配合内用剤(80g/包:300kcal) 80gを常水または微温湯などで300mLに調製し,患者の状態に合わせ適量を経口投与

2)ラコールNF配合経腸用液(200mL/包:200kcal) 患者の状態に合わせ適量を経口投与

B静脈栄養

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)エルネオパNF1号輸液(開始液または維持液)またはエルネオパNF2号輸液(維持液) 1日2,000mLの開始液(NF1号)または維持液(NF1号/NF2号)を24時間かけて中心静脈内に持続点滴静注.症状・年齢・体重に応じて適宜増減

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