診療支援
治療

痔核,裂肛,肛門周囲膿瘍,痔瘻,粘膜脱症候群
hemorrhoids,anal fissure,periproctal abscess,anal fistula and mucosal prolapse syndrome
石原聡一郎
(東京大学教授・腫瘍外科・血管外科)

頻度 よくみる(各肛門疾患の正確な有病率は明らかでないが,痔核が最も多いとされ,有症状例が4.4~13.3%,無症状例も含めると21.6~55%と報告されている.裂肛の頻度も比較的高く,生涯発生率が11.1%であったとの報告がある.痔瘻の有病率は欧米では100,000人あたり5.6~20.8人と報告されている)

GL肛門疾患(痔核・痔瘻・脱肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版

治療のポイント

・痔核,裂肛,肛門周囲膿瘍,痔瘻,粘膜脱症候群は類似した症状を呈することがあるが,病態や成因は大きく異なり,正しく鑑別診断することが治療のファーストステップである.

Ⅰ.痔核

◆病態と診断

A病態

・肛門管内の「肛門クッション(粘膜下・肛門上皮下の血管や結合組織から構成される柔らかい組織)」が肥大して,脱出や出血などの症状を呈するようになった状態.

・歯状線よりも内側(口側)の痔核を内痔核,外側(肛側)の痔核を外痔核とよぶ.また,肛門部に急性に生じる血栓(血栓性外痔核)や浮腫も痔核とよばれる.脱出した内痔核が肛門管で絞扼され血行障害に陥った状態を嵌頓痔核とよぶ.

B診断

・出血,疼痛,脱出,腫脹,瘙痒感,粘液漏出が痔核の主な症状である.出血は明るい色調の鮮血であることが特徴であり,特に暗赤色の出血,粘血などの場合には,他の消化管疾患との鑑別を念頭におく.

・診断は肛門部の視診,触診,肛門鏡(筒型,二枚貝型)によって行われる.

・内痔核の臨床病期分類としては,Goligher分類が多用されている.この分類法は,内痔核の程度を患者の自覚症状により4段階に分類するものであり,治療法選択の指標となることから汎用されている.

  Grade Ⅰ:排便時に肛門管内で痔核が膨隆するが,脱出しない.

  Grade Ⅱ:排便時に脱出するが,自然に還納する.

  Grade Ⅲ:排便時に脱出し,自然に還納しないが,用手的に還納が

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