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GL鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015
治療のポイント
・鼠径部・腹壁・横隔膜ヘルニアは自然治癒しないため,治療の原則は手術である.
・軽症状で嵌頓の危険性が低い場合には,十分な説明のうえ経過観察することも許容される.
・嵌頓の場合には絞扼を伴うことが多く,全例緊急手術の適応である.
・術式は再発率の観点からメッシュを使う手術が推奨され,腹腔鏡下手術の割合が年々増加している.
◆病態と診断
A病態
・ヘルニアとは,体の組織の一部が正しい位置から欠損部を通じて脱出した状態のことをいい,腹部では外ヘルニア(腹壁ヘルニア)と(体腔)内ヘルニアに大別される.
・鼠径部ヘルニアは腹壁ヘルニアの代表的疾患であり,ヘルニア門の位置で内鼠径ヘルニア,外鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアに分けられる.
・腹壁ヘルニアには,腹壁が自然に脆弱となり腹腔内臓器が脱出するものと,開腹手術の切開創が離開した腹壁瘢痕ヘルニアがある.
・横隔膜ヘルニアは内ヘルニアに相当し,横隔膜の欠損部を通じ腹腔内臓器が胸腔内に脱出した状態である.発生部位により大きくBochdalek孔ヘルニア,傍胸骨裂孔ヘルニア,食道裂孔ヘルニアの3つに大別される.
B診断
・症状は軽度のものから緊急手術を要する病態まで認められ,多くは腹部の膨隆・違和感・疼痛を訴え受診する.
・鼠径部ヘルニア・腹壁ヘルニアは,腹部の膨隆を確認し,触診にてヘルニア門を同定し診断する.
・横隔膜ヘルニアは,無症状から嘔吐などの消化器症状,胸痛や呼吸困難などの胸部症状の訴えまで幅広い.
・CTなどの画像診断が有用であり,脱出部位・臓器の診断をつけるほか,嵌頓症例では脱出臓器の血流評価やイレウスの有無なども確認できる.
◆治療方針
鼠径部・腹壁・横隔膜ヘルニアの治療の原則は手術であるため,外科医への紹介が必要である.
外科医以外がヘルニア症例を診る際は,救急外来での嵌頓症例である可