診療支援
治療

膵癌
pancreatic cancer
木村七菜
(富山大学・消化器・腫瘍・総合外科)

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GL膵癌診療ガイドライン2022年版

ニュートピックス

・「膵癌診療ガイドライン2022年版」で新たに,腹腔洗浄細胞診陽性膵癌に対する外科的切除は行わないことが推奨された.腹腔洗浄細胞診陽性の切除例では腹膜転移再発が有意に高く,細胞診陰性例と比較しても切除後の予後は有意に不良であるとの結果が出ている.

・また同ガイドラインでは「熟練した施設で行うことを」という条件付きではあるが,腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった低侵襲膵切除について,膵頭十二指腸切除術および膵体尾部切除ともに「行うことを提案する」という文言に変更となった.

治療のポイント

・膵癌は特異的な症状がないため,発見されたときにはすでに進行している例が少なくない.しかし,膵癌の唯一の根治的治療は手術での原発切除であり,早期発見であるほど切除できる可能性も高くなる.このため,検診などで積極的に腹部エコー検査など画像検査を行い,早期発見を目指したい.

・肝転移や肺転移など遠隔転移があり切除不能な症例や,局所進行切除不能膵癌の症例でも,化学療法を行い手術可能と判断した場合には積極的に手術(conversion手術)を行っている.conversion手術後の5年生存率も近年上昇傾向にあり,当科においてconversion手術を行った局所進行切除不能膵癌患者の5年生存率は58.6%と良好な成績を得ている.このため,切除不能膵癌として発見された場合でも,すみやかに膵臓専門医のいるconversion手術が施行可能な施設への紹介を行うべきである.

◆病態と診断

A病態

・膵癌の罹患率は人口10万人あたり34.8人であり,死亡率は人口10万人あたり30.5人ときわめて予後の悪い癌である.罹患率は年々上昇の一途を辿っており,1995年と比較すると約2倍以上となっている.

・膵癌のリスクファクターとして,家族歴,遺伝性膵癌症候群,

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